Tempered GAMES @asclannasdango
詳細はこちら(https://note.com/saitygameslabo/n/n303ca7afbfe0)にあり、随時更新予定です。
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- 「船を止めるな!」のゲームデザインの課程(2)
- ここでは、複数回に渡って、ゲームマーケット2026春で発売予定の「船を止めるな!」のゲームデザインの過程を振り返る。これにより、ご購入前にゲーム内容を判断しようという方の助けになったり、何かゲームをデザインする際の参考になることを祈っている。 本作の総合ページは、https://note.com/saitygameslabo/n/nbde4a213f9f1となっているので、ゲームシステムなどの詳細が気になる方は確認していただけると幸いだ。 2.経済構造のデザイン勝敗のメカニクス では、実際に、どのようなゲームの中身にするのか、ということを考えた時に、ゲームクリアとゲームオーバーの条件を考えることにした。 まず、参考作品として挙げており、似たような経済規模を持つ「パンデミック」や「アンドールの伝説」について考えてみよう。 これらのゲームでは、(一般的に)幾つかのゲームオーバー条件と、ゲームクリア条件が設定されている。 ゲームが進行するにつれて、ゲームはゲームオーバー条件を見たすような要素(略して、本記事では脅威を呼ぼう)を生成し、それが一定の圧力をかけてくるようになる。つまり、病原菌やモンスターだ。 そして、プレイヤーは、それを倒すような行動を行える。これはゲームオーバーを阻止する行為なので、防御的な行動であると言える。 一方で、「パンデミック」ならワクチンの作成、「アンドールの伝説」ならば各ミッションの達成のように、ゲームクリアの条件も存在している。 そして、プレイヤーはそのために行動することも当然できる。これはゲームクリア条件に向かう行為なので、攻撃的な行動であると言える。 つまり、これらのゲームでは、ゲームオーバーにならない程度に防御的な行動をしながら、その合間で攻撃的な行動を取ることになる。これらのゲームには一般的に時間切れ(手番数の上限)が設定され、それまでにゲームクリア条件を満たさなければならない。防御的な行動だけでもクリアできないし、攻撃的な行動だけでもゲームオーバーになってしまう、ということだ。 一方、本作に立ち返ると、こういった実装は難しいことがわかる。 なぜならば、入力メカニクスに強力なランダム性が混じっているからだ。 上述したような経済が上手くいくのは、それらのゲームが、定量的な資源(アクションポイントなど)を手番ごとに得るメカニクスだからだ。 だからこそ、この資源をどれだけ防御に振り分け、どれだけ攻撃に振り分けるのか、といったリスク管理がゲームの根幹の一つを担う。(しかし、それゆえにパズル的な構造も強くなり、奉行問題などに繋がりやすいのは上述した通りだ) しかし、入力メカニクスにランダム性を強く含んでしまうと、序盤に上振れをする可能性が生まれてしまう。 極端なことを言えば、序盤でゲームクリアに必要な条件を満たすことも可能になってしまうかもしれない、ということだ。(もちろん、「パンデミック」などにも速攻戦術のようなものはあるが、それは戦略的な選択によって発生しており、上振れだけでそうなるわけではない) これを避けるために、たとえば、一定周期ごとにゲームクリアに向けて進める量を制限する、というようなことが考えられる。 たとえば、「パンデミック」のようにワクチンを4つ作成したら、ゲームクリアというゲームならば、1ラウンドにつき1つまでしか作成できない、というような形だ。 しかしながら、それは事実的に一種のノルマであると言える。 こういったことを考慮した結果、本作は、ゲームオーバー条件を避けるような防御的な動きがメインでありつつも、定期的に訪れるノルマをクリアしなければならない、という構造を持つことに決定した。 こういった、ゲームオーバーにさえならなければ、自然と進む、ということを考慮し、『オンボロ船の危険な航海』というテーマを決定した。 よって、ノルマは難所(カード)となり、1ラウンドごとにチェックが入るようにした。 これは、ゲーム中の中目標としても機能する。 ゲームオーバーにならない、という防御的な行為は、終わりがなく、ある程度は同じことの繰り返しになってしまうため、中目標がないと、かなり淡々としたゲームプレイになりやすかった。 脅威の設計 大枠が決定したので、では、本作の脅威がどのようなものになるのか、ということを決める必要があった。 実際、ここが最も苦戦した部分になる。 まず、フレーバーはさておき、上述したような『脅威』となる要素は必要ではあるので、それが何らかのゲームオーバーになる要素を振りまく、という形を取ってみた。 また、こういった中規模のゲーム経済を持った協力型ゲームにおいて、位置関係を実装しない、ということは、ほぼあり得ない(よほど特殊な構造でなければないだろう)ので、マップ的なものも用意した。 ここからの試行錯誤は、細かい上に数も多いので、あまり詳細には語らないが、結局、何となくゲームにはなるし、つまらなくもないが、必要十分に最適化されていない、と感じるようなものとなった。 たとえば、脅威が船(プレイヤーたちが存在するマップ)を囲むので、それの位置関係などを操作し、上手く撃退するような構造を確かめた。 端的に言えば、「Into the Breach」のようになったのだが、これは位置関係としてのパズル感が強すぎ、ソリティアっぽく、協力型ゲームに向いていなかった。プレイヤー同士ならまだしも、脅威自体にも位置関係を持たせ、それを操作するパズルにするのは、最適だとは感じられなかった。 たとえば、船と脅威の位置関係を、位置関係であると共にタイムラインでもあるようにして、攻撃を上手く吸収したり、反撃をしたり、たまには相手を無理に撃退しないことを選んだり、というような構造を確かめた。 逆に、これは単調が過ぎ、位置関係がタイムラインと固定化しているために操作が難しく、プレイヤーがそれに合わせて計画がしやすすぎるし、脅威によるバリエーションも出しにくい、となった。 こういったことを試す中で、固定的な位置関係(部屋に紐づき)を持ち、連続判定を行うことで除去することのできる脅威が生まれていった。 プレイヤー同士の集合と分散 位置関係を取り扱うような中量級以上の協力型ゲームとして欠かせない要素の一つが、プレイヤー同士の集合と離散だ。 たとえば、マップ上のどこどこに行け(「パンデミック」で東京に病原菌があるとか)というのは、絶対的な座標指定であると言える。 一方で、集合と離散は、プレイヤー同士が近づいたり、離れたりすることで有利になったり、不利になったりすることで、つまり、プレイヤー間の相対的な座標指定であると言える。 協力型ゲームという、複数のキャラクターを位置関係で使用する以上、これを活用しない手はない。 たとえば、「パンデミック」であれば、病原菌を除去していったり、拠点を建てていったりするのには、一般的に離散していた方が有利であり、ワクチンを作るためには、(手札のカードが交換できるので)集合していた方が有利となる。つまり、集合は攻撃で、離散は防御だ。 あるいは、「アンドールの伝説」でも、離散することには探索のような利点があり、集合することには戦闘(集団攻撃)のような利点がある。 他方、「ファイナルファンタジーXIV」もデジタルゲームではあるが、そのギミック処理において、頭割り攻撃や、個々への範囲攻撃などを用いて、集合や離散をコントロールしている。 こういった集合と離散の設計によって、ゲームの状況に応じて、プレイヤー同士の位置が変化することになる。これを取り入れない手はない。 こちらも色々と試しはしたのだが、結果として、本作では、集合することによって『連続判定の難易度が下がる=脅威を除去しやすくなる』ようにした。これが感情的な盛り上がりとしても、協力している感じがあり、ゲームに適しているように感じられた。
- 2026/5/19 23:22
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- 「船を止めるな!」のゲームデザインの課程(1)
- ここでは、複数回に渡って、ゲームマーケット2026春で発売予定の「船を止めるな!」のゲームデザインの過程を振り返る。これにより、ご購入前にゲーム内容を判断しようという方の助けになったり、何かゲームをデザインする際の参考になることを祈っている。 本作の総合ページは、https://note.com/saitygameslabo/n/nbde4a213f9f1となっているので、ゲームシステムなどの詳細が気になる方は確認していただけると幸いだ。 1.根幹の決定協力型ゲームの構造 色々な方とボードゲームを遊んでいて思うのは、協力型ゲームの需要の大きさと、それに対しての供給の少なさだ。 以下のような記事にもまとめているが、狭義の協力型ゲームには、プレイヤー間のコミュニケーションを阻害する要素が必要だ。 そうでなければ、ゲーム内で別の操作単位(たとえば、キャラクターなど)に分割されていたとしても、メタ的に示し合わせて、最適解を行えるし、そうするのが基本的にゲームクリアに有利だからだ。 そして、これは奉行問題にもそのまま接続される。 結果として、コミュニケーションは、阻害される必要があり、それを乗り越えるのが、協力型ゲームの基本的な構造であると言える。 こういったゲームは、たとえば、「ザ・クルー」や「花火」、もっとパーティゲームによれば「ito」と言った数多くのゲームが該当する。 しかしながら、このような系統のゲームは、基本的にゲーム経済が軽量になる、という傾向が存在する。 なぜならば、プレイヤー間のコミュニケーションが阻害され、それを乗り越えることが課題であり、そのヒントがゲーム経済によってもたらされる、という前提に立つのであれば、ゲーム経済が複雑である必要はなく、むしろ、それが重いとゲーム全体が歪んでしまうからだ。 よって、中量級以上のボードゲームでは、このような構造は少なくなる。 また、協力型ゲームを選んでプレイしているのは、たとえば、あまりボードゲームをプレイしない人が混じっているとか、そういう理由であることも多い一方で、そういった人たちと会話が出来なかったり、手札や処理を確認できなかったりすることも多い、という問題点もあるだろう。 コミュニケーション阻害の協力型ゲームという構造自体が、どうしても、このような問題を含んでおり、それは協力型と相性が悪い部分もある。 また、このタイプのゲームは、ゲーム経済的な部分に則った形でコミュニケーションを行う必要があるため、「花火」のように比較的簡素なゲームシステムを再構築するか、「ito」のようにパーティゲームよりの構築をするか、あるいは、もっと一般的には、「ギャングポーカー」や「ザ・クルー」のように、よく知られた既存のゲームルール(つまり、ポーカーやトリックテイキング)に乗っかることが最善手となりやすい。 つまり、新しいゲーム構造を開発しない方がよい(推測しやすくなる)という側面もあり、その知識などを求めやすく、その点も、ゲーム初心者に合わなくなっていく、というジレンマもある。(たとえば、ボードゲームをプレイしないプレイヤーはトリックテイキングを知らないことが多いだろう) また、ボードゲームを遊び慣れていない方々と遊びたいゲームについて話すと、もっとボードゲームっぽい、もっと言えば、ゲーム経済がしっかりとある協力型ゲームをプレイしたい、という需要も大きいと感じる。 こういった場面で持ち出されることが多いのは、コミュニケーション阻害の要素がない(あるいは、非常に薄い)協力型ゲームの金字塔たちだろう。 たとえば、「パンデミック」(シリーズ)であるとか、「アンドールの伝説」であるとかだ。 こういった作品は、ゲーム経済がしっかりとしており、一方で、コミュニケーション阻害の要素も(基本的には)ない。 しかし、ゲーム経済や、盤面上の課題から生まれる問題がパズル的であることから、唯一解(と思われるもの)が明確になり、結果として、そういった解答を見つけるのが上手いプレイヤーが主導的になり、奉行問題が発生しやすい、というような問題も感じられる。 こうなってしまっては、せっかく参加した初心者のプレイヤーが、事実的にはほとんどゲームに参加できない、ということにもなりかねない。 他の系統として、たとえば、「スピリット・アイランド」のように、基本的にはほぼマルチソリティアとして行うよう形もあるが、この場合、実際にはソリティアとしての強度が高ければ高いほど、(それは十分に複雑ということにも繋がるので)1人で遊ぶのがベスト、ということにもなりやすい。 つまりは、協力型ボードゲームという構造自体が、そのカジュアルな印象とは異なり、許容されるゲームの構造幅が狭く、それぞれに特徴的な利点と欠点を兼ね備えたものになりやすい、ということだ。 そして、その欠点は、よりにもよって、初心者に致命的なものもある。 結果として、その需要に対して、出版される数が少ないのだろう。 ウォーハンマーなどの連続判定 このような特徴があるので、協力型ゲームは、以前から設計してみたいと思っていたのだが、最適なメカニクスが何か、という点を悩んでいた。 そんな中、近年、筆者がハマっている趣味にウォーハンマーというものがあり、これは、アナログゲームの中でも、ミニチュアウォーゲームと呼ばれるジャンルのものなのだが、そこに、ダイスを使った連続判定があった。 たとえば、攻撃の命中判定3+の後、有効判定4+というような判定があり、これはどういうことかと言うと、(一般的には多くの)ダイスを振り、出目が3以上のダイスだけが、次の判定に移れて、その後で出目が4以上のダイスだけが成功する、という形の判定である。 つまり、ダイス4個を振り、3+→4+の判定を行う場合、最初の3+の判定が6・4・3・1なら、出目1のダイスが取り除かれ、3個のダイスで4+の判定を行う。結果として、5・3・2になったら、出目5のダイス、つまり、ダイス1個だけが成功する、という形だ。 これは、確率が計算しにくく、また、期待値がある程度絞れる割に上振れも下振れもあり、ダイスという個別のランタマイザーの特徴を使った面白いメカニクスだと感じていた。 これに、協力型ゲームでよく用いられるアクションポイント制を足してみるのはどうか、ということを思った。 つまり、「パンデミック」のように手番で4アクションポイントが得られる、という形ではなく、それはダイスの形で配給される。そして、何らかの判定を行うたびに、ダイスが減っていき、それがなくなるまで、行動ができる、という形だ。 これによって、行動の価値が確率化され、わかりにくくなるのと同時に、たとえ、期待値が計算出来ても、(同じ期待値だとしても)その中にはハイリスク・ハイリターンの選択肢と、ローリスク・ローリターンの選択肢が混じる、というようなこともある。こういった時、手番プレイヤーが好きな行動を選びやすいのではないか、と考えた。 つまり、入力メカニクスに、強いランダム性を導入することで、奉行問題を緩和しながらも、プレイヤー間の相談などは維持した状態の協力型ゲームが成立するのではないか。 こういった発想を元に、本作はデザインされている。 よって、全体の構造(協力型ゲームであり、プレイヤー間のコミュニケーション阻害要素はなく、中量級の経済構造を持つ)が先に決まり、その後にこの入力メカニクスを使用する、ということが骨子である。
- 2026/5/18 22:53
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