Tempered GAMES @asclannasdango
詳細はこちら(https://note.com/saitygameslabo/n/n303ca7afbfe0)にあり、随時更新予定です。
- 「船を止めるな!」のゲームデザインの課程(2)
- 2026/5/19 23:22
ここでは、複数回に渡って、ゲームマーケット2026春で発売予定の「船を止めるな!」のゲームデザインの過程を振り返る。これにより、ご購入前にゲーム内容を判断しようという方の助けになったり、何かゲームをデザインする際の参考になることを祈っている。
本作の総合ページは、https://note.com/saitygameslabo/n/nbde4a213f9f1となっているので、ゲームシステムなどの詳細が気になる方は確認していただけると幸いだ。
2.経済構造のデザイン
勝敗のメカニクス
では、実際に、どのようなゲームの中身にするのか、ということを考えた時に、ゲームクリアとゲームオーバーの条件を考えることにした。
まず、参考作品として挙げており、似たような経済規模を持つ「パンデミック」や「アンドールの伝説」について考えてみよう。
これらのゲームでは、(一般的に)幾つかのゲームオーバー条件と、ゲームクリア条件が設定されている。
ゲームが進行するにつれて、ゲームはゲームオーバー条件を見たすような要素(略して、本記事では脅威を呼ぼう)を生成し、それが一定の圧力をかけてくるようになる。つまり、病原菌やモンスターだ。
そして、プレイヤーは、それを倒すような行動を行える。これはゲームオーバーを阻止する行為なので、防御的な行動であると言える。
一方で、「パンデミック」ならワクチンの作成、「アンドールの伝説」ならば各ミッションの達成のように、ゲームクリアの条件も存在している。
そして、プレイヤーはそのために行動することも当然できる。これはゲームクリア条件に向かう行為なので、攻撃的な行動であると言える。
つまり、これらのゲームでは、ゲームオーバーにならない程度に防御的な行動をしながら、その合間で攻撃的な行動を取ることになる。これらのゲームには一般的に時間切れ(手番数の上限)が設定され、それまでにゲームクリア条件を満たさなければならない。防御的な行動だけでもクリアできないし、攻撃的な行動だけでもゲームオーバーになってしまう、ということだ。
一方、本作に立ち返ると、こういった実装は難しいことがわかる。
なぜならば、入力メカニクスに強力なランダム性が混じっているからだ。
上述したような経済が上手くいくのは、それらのゲームが、定量的な資源(アクションポイントなど)を手番ごとに得るメカニクスだからだ。
だからこそ、この資源をどれだけ防御に振り分け、どれだけ攻撃に振り分けるのか、といったリスク管理がゲームの根幹の一つを担う。(しかし、それゆえにパズル的な構造も強くなり、奉行問題などに繋がりやすいのは上述した通りだ)
しかし、入力メカニクスにランダム性を強く含んでしまうと、序盤に上振れをする可能性が生まれてしまう。
極端なことを言えば、序盤でゲームクリアに必要な条件を満たすことも可能になってしまうかもしれない、ということだ。(もちろん、「パンデミック」などにも速攻戦術のようなものはあるが、それは戦略的な選択によって発生しており、上振れだけでそうなるわけではない)
これを避けるために、たとえば、一定周期ごとにゲームクリアに向けて進める量を制限する、というようなことが考えられる。
たとえば、「パンデミック」のようにワクチンを4つ作成したら、ゲームクリアというゲームならば、1ラウンドにつき1つまでしか作成できない、というような形だ。
しかしながら、それは事実的に一種のノルマであると言える。
こういったことを考慮した結果、本作は、ゲームオーバー条件を避けるような防御的な動きがメインでありつつも、定期的に訪れるノルマをクリアしなければならない、という構造を持つことに決定した。
こういった、ゲームオーバーにさえならなければ、自然と進む、ということを考慮し、『オンボロ船の危険な航海』というテーマを決定した。
よって、ノルマは難所(カード)となり、1ラウンドごとにチェックが入るようにした。
これは、ゲーム中の中目標としても機能する。
ゲームオーバーにならない、という防御的な行為は、終わりがなく、ある程度は同じことの繰り返しになってしまうため、中目標がないと、かなり淡々としたゲームプレイになりやすかった。
脅威の設計
大枠が決定したので、では、本作の脅威がどのようなものになるのか、ということを決める必要があった。
実際、ここが最も苦戦した部分になる。
まず、フレーバーはさておき、上述したような『脅威』となる要素は必要ではあるので、それが何らかのゲームオーバーになる要素を振りまく、という形を取ってみた。
また、こういった中規模のゲーム経済を持った協力型ゲームにおいて、位置関係を実装しない、ということは、ほぼあり得ない(よほど特殊な構造でなければないだろう)ので、マップ的なものも用意した。
ここからの試行錯誤は、細かい上に数も多いので、あまり詳細には語らないが、結局、何となくゲームにはなるし、つまらなくもないが、必要十分に最適化されていない、と感じるようなものとなった。
たとえば、脅威が船(プレイヤーたちが存在するマップ)を囲むので、それの位置関係などを操作し、上手く撃退するような構造を確かめた。
端的に言えば、「Into the Breach」のようになったのだが、これは位置関係としてのパズル感が強すぎ、ソリティアっぽく、協力型ゲームに向いていなかった。プレイヤー同士ならまだしも、脅威自体にも位置関係を持たせ、それを操作するパズルにするのは、最適だとは感じられなかった。
たとえば、船と脅威の位置関係を、位置関係であると共にタイムラインでもあるようにして、攻撃を上手く吸収したり、反撃をしたり、たまには相手を無理に撃退しないことを選んだり、というような構造を確かめた。
逆に、これは単調が過ぎ、位置関係がタイムラインと固定化しているために操作が難しく、プレイヤーがそれに合わせて計画がしやすすぎるし、脅威によるバリエーションも出しにくい、となった。
こういったことを試す中で、固定的な位置関係(部屋に紐づき)を持ち、連続判定を行うことで除去することのできる脅威が生まれていった。
プレイヤー同士の集合と分散
位置関係を取り扱うような中量級以上の協力型ゲームとして欠かせない要素の一つが、プレイヤー同士の集合と離散だ。
たとえば、マップ上のどこどこに行け(「パンデミック」で東京に病原菌があるとか)というのは、絶対的な座標指定であると言える。
一方で、集合と離散は、プレイヤー同士が近づいたり、離れたりすることで有利になったり、不利になったりすることで、つまり、プレイヤー間の相対的な座標指定であると言える。
協力型ゲームという、複数のキャラクターを位置関係で使用する以上、これを活用しない手はない。
たとえば、「パンデミック」であれば、病原菌を除去していったり、拠点を建てていったりするのには、一般的に離散していた方が有利であり、ワクチンを作るためには、(手札のカードが交換できるので)集合していた方が有利となる。つまり、集合は攻撃で、離散は防御だ。
あるいは、「アンドールの伝説」でも、離散することには探索のような利点があり、集合することには戦闘(集団攻撃)のような利点がある。
他方、「ファイナルファンタジーXIV」もデジタルゲームではあるが、そのギミック処理において、頭割り攻撃や、個々への範囲攻撃などを用いて、集合や離散をコントロールしている。
こういった集合と離散の設計によって、ゲームの状況に応じて、プレイヤー同士の位置が変化することになる。これを取り入れない手はない。
こちらも色々と試しはしたのだが、結果として、本作では、集合することによって『連続判定の難易度が下がる=脅威を除去しやすくなる』ようにした。これが感情的な盛り上がりとしても、協力している感じがあり、ゲームに適しているように感じられた。
