Tempered GAMES @asclannasdango
詳細はこちら(https://note.com/saitygameslabo/n/n303ca7afbfe0)にあり、随時更新予定です。
- 「船を止めるな!」のゲームデザインの課程(1)
- 2026/5/18 22:53
ここでは、複数回に渡って、ゲームマーケット2026春で発売予定の「船を止めるな!」のゲームデザインの過程を振り返る。これにより、ご購入前にゲーム内容を判断しようという方の助けになったり、何かゲームをデザインする際の参考になることを祈っている。
本作の総合ページは、https://note.com/saitygameslabo/n/nbde4a213f9f1となっているので、ゲームシステムなどの詳細が気になる方は確認していただけると幸いだ。
1.根幹の決定
協力型ゲームの構造
色々な方とボードゲームを遊んでいて思うのは、協力型ゲームの需要の大きさと、それに対しての供給の少なさだ。
以下のような記事にもまとめているが、狭義の協力型ゲームには、プレイヤー間のコミュニケーションを阻害する要素が必要だ。
そうでなければ、ゲーム内で別の操作単位(たとえば、キャラクターなど)に分割されていたとしても、メタ的に示し合わせて、最適解を行えるし、そうするのが基本的にゲームクリアに有利だからだ。
そして、これは奉行問題にもそのまま接続される。
結果として、コミュニケーションは、阻害される必要があり、それを乗り越えるのが、協力型ゲームの基本的な構造であると言える。
こういったゲームは、たとえば、「ザ・クルー」や「花火」、もっとパーティゲームによれば「ito」と言った数多くのゲームが該当する。
しかしながら、このような系統のゲームは、基本的にゲーム経済が軽量になる、という傾向が存在する。
なぜならば、プレイヤー間のコミュニケーションが阻害され、それを乗り越えることが課題であり、そのヒントがゲーム経済によってもたらされる、という前提に立つのであれば、ゲーム経済が複雑である必要はなく、むしろ、それが重いとゲーム全体が歪んでしまうからだ。
よって、中量級以上のボードゲームでは、このような構造は少なくなる。
また、協力型ゲームを選んでプレイしているのは、たとえば、あまりボードゲームをプレイしない人が混じっているとか、そういう理由であることも多い一方で、そういった人たちと会話が出来なかったり、手札や処理を確認できなかったりすることも多い、という問題点もあるだろう。
コミュニケーション阻害の協力型ゲームという構造自体が、どうしても、このような問題を含んでおり、それは協力型と相性が悪い部分もある。
また、このタイプのゲームは、ゲーム経済的な部分に則った形でコミュニケーションを行う必要があるため、「花火」のように比較的簡素なゲームシステムを再構築するか、「ito」のようにパーティゲームよりの構築をするか、あるいは、もっと一般的には、「ギャングポーカー」や「ザ・クルー」のように、よく知られた既存のゲームルール(つまり、ポーカーやトリックテイキング)に乗っかることが最善手となりやすい。
つまり、新しいゲーム構造を開発しない方がよい(推測しやすくなる)という側面もあり、その知識などを求めやすく、その点も、ゲーム初心者に合わなくなっていく、というジレンマもある。(たとえば、ボードゲームをプレイしないプレイヤーはトリックテイキングを知らないことが多いだろう)
また、ボードゲームを遊び慣れていない方々と遊びたいゲームについて話すと、もっとボードゲームっぽい、もっと言えば、ゲーム経済がしっかりとある協力型ゲームをプレイしたい、という需要も大きいと感じる。
こういった場面で持ち出されることが多いのは、コミュニケーション阻害の要素がない(あるいは、非常に薄い)協力型ゲームの金字塔たちだろう。
たとえば、「パンデミック」(シリーズ)であるとか、「アンドールの伝説」であるとかだ。
こういった作品は、ゲーム経済がしっかりとしており、一方で、コミュニケーション阻害の要素も(基本的には)ない。
しかし、ゲーム経済や、盤面上の課題から生まれる問題がパズル的であることから、唯一解(と思われるもの)が明確になり、結果として、そういった解答を見つけるのが上手いプレイヤーが主導的になり、奉行問題が発生しやすい、というような問題も感じられる。
こうなってしまっては、せっかく参加した初心者のプレイヤーが、事実的にはほとんどゲームに参加できない、ということにもなりかねない。
他の系統として、たとえば、「スピリット・アイランド」のように、基本的にはほぼマルチソリティアとして行うよう形もあるが、この場合、実際にはソリティアとしての強度が高ければ高いほど、(それは十分に複雑ということにも繋がるので)1人で遊ぶのがベスト、ということにもなりやすい。
つまりは、協力型ボードゲームという構造自体が、そのカジュアルな印象とは異なり、許容されるゲームの構造幅が狭く、それぞれに特徴的な利点と欠点を兼ね備えたものになりやすい、ということだ。
そして、その欠点は、よりにもよって、初心者に致命的なものもある。
結果として、その需要に対して、出版される数が少ないのだろう。
ウォーハンマーなどの連続判定
このような特徴があるので、協力型ゲームは、以前から設計してみたいと思っていたのだが、最適なメカニクスが何か、という点を悩んでいた。
そんな中、近年、筆者がハマっている趣味にウォーハンマーというものがあり、これは、アナログゲームの中でも、ミニチュアウォーゲームと呼ばれるジャンルのものなのだが、そこに、ダイスを使った連続判定があった。
たとえば、攻撃の命中判定3+の後、有効判定4+というような判定があり、これはどういうことかと言うと、(一般的には多くの)ダイスを振り、出目が3以上のダイスだけが、次の判定に移れて、その後で出目が4以上のダイスだけが成功する、という形の判定である。
つまり、ダイス4個を振り、3+→4+の判定を行う場合、最初の3+の判定が6・4・3・1なら、出目1のダイスが取り除かれ、3個のダイスで4+の判定を行う。結果として、5・3・2になったら、出目5のダイス、つまり、ダイス1個だけが成功する、という形だ。
これは、確率が計算しにくく、また、期待値がある程度絞れる割に上振れも下振れもあり、ダイスという個別のランタマイザーの特徴を使った面白いメカニクスだと感じていた。
これに、協力型ゲームでよく用いられるアクションポイント制を足してみるのはどうか、ということを思った。
つまり、「パンデミック」のように手番で4アクションポイントが得られる、という形ではなく、それはダイスの形で配給される。そして、何らかの判定を行うたびに、ダイスが減っていき、それがなくなるまで、行動ができる、という形だ。
これによって、行動の価値が確率化され、わかりにくくなるのと同時に、たとえ、期待値が計算出来ても、(同じ期待値だとしても)その中にはハイリスク・ハイリターンの選択肢と、ローリスク・ローリターンの選択肢が混じる、というようなこともある。こういった時、手番プレイヤーが好きな行動を選びやすいのではないか、と考えた。
つまり、入力メカニクスに、強いランダム性を導入することで、奉行問題を緩和しながらも、プレイヤー間の相談などは維持した状態の協力型ゲームが成立するのではないか。
こういった発想を元に、本作はデザインされている。
よって、全体の構造(協力型ゲームであり、プレイヤー間のコミュニケーション阻害要素はなく、中量級の経済構造を持つ)が先に決まり、その後にこの入力メカニクスを使用する、ということが骨子である。
