青い街 @Kazuki_Sugioka
カードとアートのあわいに広がる青い街です。
「解かれたページとしてのカード」というコンセプトでカードゲームをつくっています。
今回は新シリーズ
『Ars Combinatoria』の1巻を200部限定で販売します。
- 30年ぶりの返信
- 2017/4/24 22:45
新しいカードゲームセットの名称『Ars Combinatoria』は
ラテン語なんですが、その言葉を初めて知ったのは
かれこれ30年ほど前でした。
憧れの英文学者・高山宏さんの『メデューサの知』所収の
『カルヴィーノのアルス・コンビナトーリア』という評論が
その言葉との初対面。
で、まぁ、当時はなんのことやら、さっぱりわからず(笑)
ほぼ呪文ですよね>カルヴィーノのアルス・コンビナトーリア
この本の目次には、他にも
『エンキュクリオス・パイデイア』とか
『パラドクシア・アナモルフォティカ』とか
覚えるだけで強くなった気のするタイトルが
たくさん並んでいました。
まだネットのない時代でしたから、広辞苑や英語の辞書、
『現代用語の基礎知識』なんかを総動員して
それらを一所懸命に解読したものです。
とはいえ、この本のおもしろさはハンパなくて、
ぼくが「人生の一冊」を選ぶとすれば
間違いなくこの本です。
内容はと言えば、「言葉」にまつわる
おもしろいエピソードが目白押し。
くだんの『カルヴィーノのアルス・コンビナトーリア』は
イタロ・カルヴィーノのという小説家の方法論が
非常に組み合わせ術(Ars Combinatoria)的であると
指摘した評論です。
他にも、言葉が正確じゃないから行き違いが起きるんだ
ということで、
物に対して一対一で対応する言語体系を
つくろうとした
奇人たちの話とか。
同音異義語を徹底的に潰そうとしたわけですね。
人
類が言葉にたくしてきた夢と熱意と憧れが
その限界の悲しさとともに、
おもしろおかしく語られた
破格の名著でした。
実は、ぼく、
一度だけ高山さんに直接手紙を書いたことがあります。
初めて個展を開いた際、
案内状に著作からの引用をさせて欲しい旨の打診でした。
たしか当時勤務されていた都立大学宛に出したと思います。
高山さんからは申し出を承諾するとともに
ぼくの略歴を見て、
自分の母の出身が広島の呉であると
書かれた葉書が
返ってきました。
その葉書は、
呉の実家の机の上に今でも飾ってあります。
そんなこんなから、かれこれ30年が経ち、
ようやく「作品」の形で返信ができる。
ぼくにとって、『Ars Combinatoria』には
そんな思いが込められているのです。
そして、
争いを避けるために言葉に願いをたくした
先人たちの夢を、
ぼくもまた追いかけている。
そんなタイトルのカードゲームです。