PLUTO GAMES

韓国のボードゲームデザイナーが設立したボードゲームスタジオです。 テーマを深く研究し、独創的なシステムのボードゲームを創作します。

『プレジデントメーカー』デザイナーズノート⑤ 最後の10%に向けて走るゲーム
2026/5/19 11:44
ブログ

韓国の大統領選挙を舞台にした『プレジデントメーカー』の開発過程を連載しています。

前回の記事はこちらからお読みいただけます。

『プレジデントメーカー』デザイナーズノート ① 開発の契機

『プレジデントメーカー』デザイナーズノート ② 4人の候補者

『プレジデントメーカー』デザイナーズノート③ 有権者

『プレジデントメーカー』デザイナーズノート④ 有権者の票を得る方法


 

このゲームは、最も多くの票を得た人が勝利するゲームです。
選挙ですから。


ところで実際の選挙は、最後に開票箱を開けてみるまで、誰も結果を知ることができません。
1日目に何票、2日目に何票というかたちで票が積み上がっていくのではなく、
数週間にわたる選挙運動の結果が、一日でいっきに出そろいます。


そのような選挙の特性―勝敗が決まる方式―を、このゲームでもそのまま再現したいと思いました。


そのため、ゲーム中に行う「アクション」は、すぐに票(得点)を得る行動ではなく、
大半が今後票を得る「確率」を高める行動です。

(すぐに票を得られる「ポピュリズム」のようなアクションも一部あります。選挙で「今すぐ」票を得るということがどのように説得力を持つかについては、後ほど説明します。)

 


だから『プレジデント・メーカー』が他のゲームと比べて非常にユニークな点は、勝敗が決まる方式、
さらに詳しく言えば、それが発現するゲームの流れにあります。


一般的なゲームは、序盤から終盤にかけて、ずっと得点を抜きつ抜かれつしながら競い合い、最後の瞬間に勝敗が決まります。
一方『プレジデントメーカー』は、ゲームの90%の地点まで勝敗をまったく予測できないまま進み、
最後の10%の区間で、突然得票レースが始まります。


面白いのは、その最後の10%のレースが繰り広げられるあいだ、プレイヤーにできることは何もないという点です。


実際にテレビで開票速報を見守るように、自分の地盤で得票率が高くあってほしい、苦手な地域で意外な健闘を見せてほしいと「祈る」しかありません。
もちろんその「祈り」は、単なる運だけでなく、ゲームを通じて自分が懸命に選挙運動をしながら積み上げてきた「確率」に基づいています。

 

▲開票フェーズになると、各地域ごとに袋の中へ支持率に相応した数のトークンを入れ、投票率の分だけトークンを引く。


いずれにせよ、この最後の10%のレース―開票フェーズ―では、歓声と嘆息が同時に飛び交う光景を目にすることになります。(笑)
実際にプレイしてみると、「運の要素が少し高すぎないか?」と感じるかもしれません。
運の要素は確かに高いです。


ただ、実際の選挙もやはり、こうした運の要素が積み重なって結果につながると思っています。
『プレジデントメーカー』はあくまでゲームですから、運の要素の働きがより強く発現するよう、投票の過程が少し誇張されているだけです。


何より、開票フェーズで一票一票が明らかになるたびのドーパミンとでも言いましょうか、

それが与える楽しさこそがこのゲームの核心だと思っているため、運の要素の比重を無理に下げることはしませんでした。

 

 


 

「コンクリート」支持層


先ほど、ゲーム中に「すぐに」票を得る場合もあると書きましたが、
候補者たちが得票レースを繰り広げる「開票トラック」は、その出発地点が公平ではありません。

全員が最初のマスから始まるのではなく、与党候補者は最も多くの票を、無所属候補者は最も少ない票を「すでに受け取った状態で」ゲームを開始します。

 


開票もしていないのに票を受け取っているとは、少し不思議ですね。
これは「何があっても投票所に足を運んで候補者に票を投じる、熱心な支持層の数」を象徴しています。


韓国では政治用語として「コンクリート支持層」と表現します。
絶対に崩れないほど固い支持層、という意味です。
日本でいう「岩盤支持層」に近い概念ですね。


もちろんこのコンクリート支持層は、ゲーム中に一部変動することがあります。
先ほど触れた「ポピュリズム」のようなカード効果によって増えたり、前回の記事で説明した「リスク」によって減ったりもします。


重要なのは、選挙期間中にコンクリート支持層をしっかり積み上げておくと、開票フェーズの抽選による運の要素をある程度相殺できるという点です。
当然のことながら、出発地点が前にあるほど、総得票数が多くなる確率も高くなりますから。

 


 

何人でプレイするのが一番楽しい?


正直に言えば、当然4人です。
4人全員がそれぞれ候補者をひとりずつ担当して、キャラクターに合わせて駆け引きするのが一番楽しいに決まっています。
ただ、2人・3人モードでも、その人数に合った楽しさとバランスは十分にあると思っています。


3人ゲームの場合、無所属候補者はNPCとなり、すべての地域でわずかな支持率を持ちながら、ひっそりと選挙運動を行う候補者になります。(実際の世界に少し近いですね。)
ゲームの構図は、進歩と保守という二大政党が争うなかで、第三者である中道候補者がその隙間をうまく突いて上がっていく形になります。


2人ゲームでは、無所属候補者は同様に存在感の薄いNPCですが、中道候補者は進歩・保守の候補者と交互に協力するような中立的なNPCとして登場します。
進歩と保守の候補者が交互に中道候補者のカードを使い、中道候補者の支持率を調整できる仕組みです。
ある意味、こちらのほうが実際の世界の政治構図に最も近いかもしれません。

 

 

気づけば、当初考えていたよりもずいぶん長い連載になってしまいました。
これほど長く書くつもりはなかったのですが、多少意識の流れるままに書いていたらこうなってしまいました。(笑)

ゲームマーケット前に締めくくることができて、よかったです。


ゲームを作るたびにこうした記録を残すことは簡単ではありませんが、自分にとっても、誰かにとっても意味のあることだと思っています。
この文章が、誰かにとって少しでも楽しみや刻激になれたなら幸いです。


ありがとうございました。

 

「完」

 

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