PLUTO GAMES

韓国のボードゲームデザイナーが設立したボードゲームスタジオです。 テーマを深く研究し、独創的なシステムのボードゲームを創作します。

『プレジデントメーカー』デザイナーズノート ② 4人の候補者
2026/5/4 15:27
ブログ

韓国の大統領選挙を舞台にした『プレジデントメーカー』の開発過程を連載しています。

前回の記事はこちらからお読みいただけます。

『プレジデントメーカー』デザイナーズノート ① 開発の契機

 


 

『プレジデントメーカー』は選挙ゲームです。 

選挙が成り立つためには、必ず次のふたつが存在しなければなりません。 

「候補者」「有権者」

 

まずはこのふたつの要素をどう表現するかというところから、考え始めました。

 

4人の候補者

ボードゲームのプレイ人数は、2〜4人が最も一般的です。 

それにならい、まずは4種類の候補者を考えてみることにしました。 

すると、すんなりと4人の候補者が思い浮かびました。 

 

進歩、保守、中道、無所属。

 

実際、韓国の大統領選挙に登場する候補者たちは、おおむねこの4つに分類できます。

しかしここから、「リアリティ」と「ゲーム性」のあいだで、また別の悩みが始まります。

 

なぜなら、韓国では中道や無所属の候補者が大統領に当選することはないからです。

(おそらく他の国でも似たようなものでしょうが。)

 

毎回、進歩と保守の候補者が文字通り一進一退の綱引きを繰り広げながら政権を交代させていく構図であるため、現実を忠実に反映するなら、進歩と保守の対立を描く2人用ゲームのほうが適切かもしれません。

 

こういうとき、判断の基準となるのはゲームの「方向性」と「ターゲット」です。

 

 

私が考える『プレジデントメーカー』のウェイトは、BGG基準で2点前半で、 

比較的気軽に楽しめる、ファミリー向けのゲームであるべきでした。

 

また、「政治」というテーマながら、重苦しい雰囲気にはしたくなかった。

むしろ、笑いながら楽しめるものにしたかったのです。

 

そうなると、やはり最大4人で集まって、一種の「政治的冗談」を言い合うような場面が似合うと思いました。 

加えて、候補者が4種類いれば、それぞれの特性に合わせた非対称要素を盛り込めるという利点もありました。

 

 

「進歩」「保守」は、伝統ある「二大政党」として、全国の支持率を二分する候補者に設定しました。

ただし、政治的志向の違いにより、特定の地域では支持率が高く、別の地域では支持率が底をつくという、極端な勢力図を持っています。

 

「中道」は、全国的に平均的な支持率を持つ候補者です。

すべての地域でバランスの取れた支持率を背景に、機を見て着実な得票を狙えます。

 

「無所属」は、政治的志向ではなく「専門性」(後述する「政策」に関連する能力)を拠り所とする、

初期支持率が最も低い候補者です。しかしその分、後先考えず積極的な妨害プレイを展開できます。

失うものがない「アンダードッグ」とでも言いましょうか。

 

候補者間の非対称性をどこまで設けるかについては、ずいぶんと悩みました。

 

たとえば『ヘゲモニー』や『ROOT』のように、キャラクターごとにプレイのルール自体が異なれば、没入感はより高まるでしょう。

しかしそうすると、ゲームのウェイトが大きく上がらざるを得ません。 

これは、先に述べたゲームの「方向性」と「ターゲット」に合いませんでした。

 

それよりも、ゲーム内で各候補者が置かれた立場と、候補者どうしの相関関係そのものが、自然に非対称性を生み出してくれることを望んでいました。 

もちろん、より優れたデザイナーであれば、適切なウェイトを保ちながらも、

たとえば進歩的あるいは保守的なキャラクターに合った「行動的特性」のようなものを自然に織り込めたかもしれません。

ただ、はっきりしているのは、このゲームで私がフォーカスを当てているのは「政治」ではなく「選挙」だということです。 

 

「政治的相関関係」よりも、前回の記事で触れた「選挙という方程式」をゲームとして解き明かすことが目的だったため、ある意味では「進歩」「保守」といった政治用語は、テーマへの没入感を高めるための「背景的装置」に近いと言えるかもしれません。

キャラクターの非対称性にもっと力を入れなかった理由についての、言い訳めいた話でした。(笑)

 

諸派候補の存在

こうして候補者を考えながら、どうしても入れたいと思った要素がもうひとつあります。 

それは、「諸派候補」です。

 

日本の選挙ではどうかわかりませんが、韓国の選挙では、候補者番号8番や9番あたりのマイナーな候補者の中に、荒唐無稽な(?)公約を掲げてポピュリズムに走る人物が、必ずといっていいほど一人はいます。 

人々は冗談まじりに「今回も本当に入れたい候補がいない。いっそあの人に票を入れたほうがいいかも」などと言い合ったりします。 

こういった候補者の存在は、ゲームにおいても非常に面白く、意味のある「スパイス」になり得ると思いました。

 

諸派候補はゲーム内で、ごくわずかな支持率を持つ一種のNPCとして存在しますが、

状況によってはプレイヤーと「候補一本化」ができるという特徴があります。

 

一本化をすると、後の開票フェーズで諸派候補が得た票を吸収できる一方、小さくない「リスク」も背負うことになります。(リスクの詳細については、後の記事で改めてご説明します。)

また一本化は早い者勝ちで一人しかできないため、駆け引きと決断力が求められます。

 

もちろん、一本化したからといって必ずしも得をするわけではありません。 

時には不用意な一本化が災いして、選挙に敗れるケースも生じます。 

 

はっきりしているのは、諸派候補との一本化がこのゲームにおける意味のある変数として機能するということです。

そしてこの部分は、テーマ的にもシステム的にも、自分では満足しているところです。

 

次回は、候補者たちが「攻略」すべき対象、「有権者」についてお話しします。

お読みいただきありがとうございました。

 

次回へ続く

 

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