按理具庵 @anriguan
「あんりぐあん」 と読みます。駆け出しの発明家が勢いで一人起業してしまった会社です。
陰陽五行プレイングカードFESCA(フェスカ)をトランプの再発明として創作しました。
しなり折りカード立てが第一発明品で、これを応用した紙製ミープルやチェス・将棋駒に展開中です。
- 純粋なゲーム用タロットのデザイン
- 2024/12/19 17:41
今でこそ占い用具として知られるタロットカードが、実トリックテイキングゲーム(以下トリテ)用のカードであったことは、ボドゲ界隈の人でもあまり知られていないのではないか。もっと言えば日本語では「トランプ」って用具の名前として普及しているが、元はトリテの「切り札(Trump)」が語源であり、用具としては「プレイングカード(遊戯札)」が正しいことも、わりと知られてないのかも。
そんなこんなで、「純粋な」、あるいは「完全な」ゲーム用タロットカード(左肩にインデックスがあり占い要素を全て排除したタロット)に興味があって探してみた。ゲーム用としてデザインされたタロットはいくつか見つかるのだが占い要素を排除した純粋なゲーム用は無かった。そもそも占い以外にゲームとして使うという需要がないし、大アルカナ22枚の抽象カード名を排したら、それはもうタロットと呼ばないので検索に掛からないのかもしれない。占い要素を完全に排して4スート14ランクの54枚に22枚の切り札を追加した計78枚のカード構成だけのゲーム専用のカードってどんなだろう、無いなら作ろうと創作意欲が湧いてきてデザインしてみた。
大アルカナ(←この「アルカナ」という用語自体が占い用であるが他に適切な用語がないので使用する)22枚のカードデザインを数だけに抽象化して表現するとき、その図柄をどのように表すかということ。小アルカナ56枚は現在のトランプ同様にスートマークと3列配置のデザインに騎士(Knight)の絵札ランクを追加する。ただしインデックスの表記文字は王(King)のKと被るのでスペイン語caballoのCを用いる。大アルカナ22枚も独自シンボルマークと配置にする方法もあるが、これは新たなスートの追加で単なる変則5スートのカードとなってしまいタロットらしさが失われる。切り札はスート無しでランクのみ有する他のスートと異なる特殊なランク構造であることを示すため、やはり同じデザインは避けるべきだ。大きく算用数字(アラビア数字)を描いてもよいがデザイン的には安易なありふれた方法でとってもダサいのである。
そこで欧州に残るゲーム用タロットに使われているローマ数字を使ってみた。でもローマ数字って読み難い(特に4とか9とか)し、Xが上下対称文字であるため見る方向によってIX(9)とXI(11)の区別が付かないという致命的な問題もある。算用数字の6と9も同じ問題があって下線を引いて上下を区別する方法もあるが、余計なものを加えるのはどうも美しくない。そこでスートマークに赤と黒の2色が使われていること、マイナスの数を赤字で表現することから、5-1や10-1を意味する逆配置のIを赤字で示して区別する方法を思い付いた。赤黒の2色が活かされ読みやすくなった。
ローマ数字には0を表す記号がない。「愚者」は他の21枚の切り札と違って特殊な「逃げ札」として使われるため数字がなく空白で表していたらしい。現代版では算用数字の0に対応付けてアルファベットのОを使っているらしい。ついでながら日本語というか漢数字にも位取り表記のための記号文字として〇(←丸でなく漢数字)があって、例えば三百五円を三〇五円と表記するらしい。赤文字を使っている時点で既に正式なローマ数字ではないく、改変したローマ数字なので独自性を出して「・」中黒で表記してみた。でも、ローマ数字ってかっこいいけど使い慣れてないためか読み難い。
カードを遠目で見ても数がいくつであるか判断できる数字のデザインはないか探しまくっていたら、楔形数字、算木数字、マヤ数字、果てはシトー会数字まで見つけて、そろばん感覚で読みやすいマヤ数字が最適と結論付けた。点が1個で1を2個で2を3個で3を4個で4を表し、5は横長の棒で、以降は足し算の規則で5の横棒と1の点の組み合わせで表記する。一応0(ゼロ)の表記もあるが規則的な記号には見えない。漢字で0を表記するとき「零」や「空」を使うのと同じ感覚の数字なのかも。本来はマヤ数字は20進数の19が最大なので横棒は3本までであるが、20や21を同じ規則で表記しても数として認識されるだろうと拡張して使うこととした。
このマヤ数字を切り札のランク表記デザインに採用して汎用カードTEG7を2023年に作成した。ただし78枚の標準構成ではなく4スート9ランク18追加の縮小56枚版である。その後、このマヤ数字を独自に縦型に改変して汎用カードTEM4に採用した。
標準78枚構成のタロットに適用すれば以下のようなデザインになる。小アルカナ56枚のデザインについてもトランプ互換としながらいくつかの点を改良している。
スペードのAのマークが凝った図柄で大きくなったり、「1」が「A」と表記されるようになったり、絵札の図柄が顔の向きからなにやらスートごとに細かく異なっていたり、長い歴史のなかで改変が加えられ純粋な対称性や規則性が失われて抽象デザインの純粋な美しさが無くなっている。歴史的改変を一掃して純粋さを取り戻し、さらにスートマークの配置をバランスよくしてある。もっと徹底的にゲーム専用に機能性を求めて改良すれば、絵札を排して数字化し、スートマーク配置も識別性を考慮して、スート毎に4色の色分けしと、改良したのが跳躍進化形トランプを謳う陰陽五行札FESCAであり、そのサブセットの4スート版がTEG7やTEM4である。ここでは伝統的なタロットとトランプのデザインに寄せておくことにする。
このタロットをデザインしている間にまた新たな疑問が生まれた。
(1)トランプが52枚構成に対し、タロットの小アルカナが56枚構成なのはなぜか。
(2) スートは4種あるのに、なぜ赤と黒の2色分けなのか。
(3) 大アルカナの枚数は、小アルカナのランク数と同じ14ではなく、なぜ22枚としたのか。
以前(1)の回答として「枚数はゲームに依る」として、4人制ペア戦のトリテをするため奇数となる13ランクが選ばれたと推測した。では56枚は当時に流行していたトリテで最適なカード枚数であったのか。既に仮説は得られているが、ここに記すには内容的に重すぎるので、また別のブログとして公開するつもりだ。
(2)に関してはググってみると赤と黒の2色はは「昼と夜を象徴している」とかトンデモ回答が溢れている。タロットゲームの古(いにしえ)のルールを調べてみれば自ずと答えが得られる。黒スートと赤スートでは数字ランクの強さの順がことなっており、機能的にこれを区別しやすくするために色分けしてあるのだ。ではなぜスート毎に強弱の順が異なるのか、そこまで解説してるのは見つけられなかったが、トランプの起源を辿れば推測できる。おそらくトリテルールの進化とスートの誕生に関わっているのだろう。原始トリテ「赤と黒の起源」という名前のゲームとして公開したい。
(3)に関しても回答は見つからない。当初は21枚であったが「愚者」の1枚が加わって22枚となったらしい。ではその21枚の起源はどこって、そこから先が辿れないのだ。21と云う数を頼りに勝手に推測するしかない。
Wikipediaによればタロットのカード構成の起源としては、小アルカナに相当するトリテ用のカードセット(40~56枚?)に切り札専用の別カード(20~22枚)を合体させたという推察が示されている。この別カードはゲーム用であったのか、あるいは寓意が込められた絵本的なものであったのか不明のようだ。
21と云う数は7×3なので1~21の連番カードセットで3人制で7回戦の数の大きさ比べの賭博ゲームを考えた。いかにもありそうであるが中途半端な21枚の構成は好まれないであろう。
六面体のサイコロ2個を振って出る目のパターン数が21である。2つのサイコロを区別すれば36パターンが正しいのであるが、同じ形状のサイコロで区別できないと、ゾロ目6パターンと、残り30パターンの区別なし半分の15パターンで、合わせて21種になる。このサイコロ2個のパターンをカード化したのが牌九牌(天九牌)であり欧州に伝わりドミノの原型にもなったと言われている。もしトランプの原型となった葉子(馬弔)と同じ時期に欧州に伝わっていたとしたら、これはあり得るだろう。サイコロを2個振って吉凶を占うとすれば、その出目パターン毎に解説カードがあり、個々のパターンに名前を付けて後々の大アルカナになったとしたら…、占い繋がりで大いにありそうな仮説である。この仮説を基にドミノ風(正しくは牌九)タロットをデザインしてみた。21パターンをどのように番号付けするかが悩みどころであるが、単純な合計値で並べて同じ合計数の間では2つの出目の差が大きい順とした。
関連リンク
https://gamemarket.jp/game/184828 タロット・デ・ポーカー(ネオタロットポーカー)
https://gamemarket.jp/blog/177442 FESCA(フェスカ)は78枚だけどタロットではない
https://gamemarket.jp/blog/78350 FESCA(フェスカ)マーク配置デザイン原図
https://gamemarket.jp/game/181378 TriElioGreed7(トリエリオ・グリード・セブン)
https://gamemarket.jp/game/182400 エラトス(Eratos)でファンネルトリテ(Funnel-TTG)