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[ボードゲーム作るには] 8.テストプレイを重ねよう
2023/12/7 3:06
ブログ

テストプレイを重ねよう

ボードゲーム制作において、テストプレイのしすぎということはありません。
テストプレイはボードゲーム制作でもっとも重要な工程です。

 

テストプレイの基本

テストプレイでは製作者のあなた自身もプレイヤーとして参加した方が良いでしょう。創作は自己表現です。ボードゲーム制作においても、ゲームにあなた自身が「面白い」と感じる要素を取り入れて行って、あなた自身が「つまらない」と感じる要素を削っていく、ということが調整の基本です。自分自身がプレイヤーとしてゲームに参加することで、机上の検討では得られなかった知見が得られます。ゲームに参加して自分自身がセンサーとなり、開発中のゲームの何が良くて何が機能していないかを検知していきましょう。ゲームの面白さや問題について自分がどう感じるかを大切にしてください。

 

テストプレイをする際はメモを取りましょう。メモすべき点としては、プレイ中に気付いた課題、経過時間、得点の明細などがあるかと思います。メモをし忘れがちだけれど重要な項目として、ゲーム終了までに費やしたターン数を挙げます。開発初期のルールではゲーム終了までのターン数が少なすぎたり、多すぎたりするかもしれません。ターン数をメモしておけば、後ほど調整するのに役に立ちます。例えば、10ターン費やした時はだらだらした印象があったからもっとカードの効果を強くしよう、とか、3ターンで終わった時はあまりにも早すぎて楽しめる余地がなかったから勝利条件をより達成しにくくしよう、といった具合です。

 

テストプレイの重ね方

テストプレイは日を跨いで何度か行いましょう。特に開発初期のテストプレイでは重要かつ根本的な課題が明らかになることが多いです。そのような課題への対処方法をその場で思いつくことは難しいです。また、対処方法を思いつけたとしても対応するモックをその場で作成できない場面もあるかと思います。作成している間、他の人に待っていてもらうわけにもいかないですからね。自分で気付いたり指摘されたりした直後は解決策など到底思い浮かばないような課題であっても、何日かおいたら簡単な対処法がひらめいた、ということも多いです。なので、テストプレイは何度か時期をおいて計画することをお勧めします。

 

テストプレイを重ねる中での調整は優先すべき項目から順番に対処していきましょう。ゲーム開発の序盤は優先度の大きな課題から順に対処していき、ゲーム開発の終盤はゲームへの影響の大きいパラメータから調整していきましょう。ゲーム開発の序盤は様々な課題を発見すると思います。より根本的な課題は解決により大がかりな変更が必要になる傾向があります。小さな課題から対処していってもその前提から後で覆せざるおえなくなりますので、より根本的な課題を優先的に対処していきましょう。ゲーム開発終盤では各種パラメータの調整を行いますが、これも同様の理由でゲームへの影響が大きそうなパラメータから順に1つずつ調整していくとよいでしょう。

 

想定プレイ人数のすべてのケースでテストプレイをしてみましょう。例えば35人をプレイ人数とするゲームならば、プレイ人数が3人の時、4人の時、5人の時それぞれでテストプレイしておきましょう。ボードゲームにおいてプレイ人数が異なる、という事はゲーム性に大きな影響を与えます。4人プレイで非常に面白いゲームであっても3人プレイ時や5人プレイ時では面白さが半減する、ということもありえます。大丈夫なはずだと思いこまず、テストしてみることをお勧めします。私自身もテストして良かった、という経験があります。私が制作していたゲーム「OVERHAUL」では35人をプレイ人数と設定していました。主に4人プレイ時をコアターゲットとして制作し、ある程度ルールが固まった後に5人でのテストプレイをしました。しかし3人でのテストプレイは行っていませんでした。理由は3人プレイ時は4人プレイ時との差分が小さいと思い込んでいたためです。私の制作ゲームでは5人で遊ぶ際と4人で遊ぶ際とで初期手札枚数が異なっていました。そのため5人で遊ぶ場合のテストプレイだけは絶対に必要である、という認識はありました。一方で3人で遊ぶ場合のテストプレイが必須であるという認識はありませんでした。3人でプレイする場合の初期手札枚数は4人プレイ時の枚数と同じだったため、わざわざテストプレイする必要性を感じていませんでした。3人プレイ時の課題に気付けたのは偶然です。テストプレイに協力してくれていた友人が、その人自身の別の友人と私のゲームを遊んでもらう機会があり、その際3人で遊んでくれました。そしてその場で現状の得点計算ルールだとゲーム途中で勝者が確定してしまう課題があることが分かりました。4人プレイ時を主眼において調整した得点計算のルールが、3人プレイ時はうまく働かなかったのです。友人が課題を私に伝えてくれたおかげでルールの修正を行うことができましたが肝の冷える経験でした。このように問題がないはずだと思っていても実際にはそうではない、という事はよく起こりますので、テストプレイはすべてのケースのプレイ人数でしっかり行いましょう。

 

テストプレイ中にもらった意見の受け止め方

テストプレイをする際は、協力してくれた方の提案よりもその提案に至った原因に注目するようにしましょう。テストプレイ時に協力してくれた人から「こうすれば良いのではないか」という提案をもらうことがあるかもしれません。それ自体は大変ありがたいのですが、それをそのまま取り入れる事はおすすめしません。一般に、ある問題を解決するアイデアがそのまま商品に取り入れられることは滅多にありません。商品にはたくさんの基準があり、それらの基準を同時に満たすことのできるアイデアだけがうまく機能するからです。ボードゲーム制作者のあなたも、自分の作品で守りたい様々な基準・価値観があるはずです。他の人のアイデアはあなたの価値観に沿った形にボードゲームを変化させてくれるとはかぎりません。なので、何らかの提案を聞いたら、すぐに採用せず、その背景を詳しく質問してみるとよいでしょう。提案の背景にはボードゲームが抱える課題が含まれているかもしれません。アイデアそのものは採用したいと思わなくとも、その提案に至る背景・原因には納得できることが多いです。

 

テストプレイでの評判が悪くても、すぐに諦めるべきではないかもしれません。開発初期のゲームは課題の残った状態です。そのため、一人回しではあなたが感じることのできた面白さを、テストプレイでは協力してくれる人が感じることができないかもしれません。テストプレイでの評判が悪いというのは非常に堪えるものです。制作を止めたくなります。しかし娯楽に対する感じ方は人それぞれです。あなた自身がゲームに面白さを感じることができるならば、アイデアを捨てず課題をつぶしていけば表現する価値のあるゲームになります。少なくともあなたと同じ感性の人には気に入られる作品になるからです。私がゲームのモックを作り始めて友人に遊んでもらったとき、友人の反応は決してよいものではありませんでした。ルールに曖昧な部分が残っていましたしインストのできも惨憺たるものでした。その結果を受けて私は制作を止めてしまいました。転機になったのは2023春のゲームマーケットでした。ゲームマーケットの際に久々に会った友人に「自分もボードゲームのモックを作った」という話をした所、ぜひ遊んでみたいと言いました。この時点ではゲーム制作を続けるつもりはまったくありませんでしたが、半ば強引に押し切られて自作のモックで遊んでもらうことになりました。秋葉原のボードゲーム屋で遊んでもらった所、「すごい!」「面白い!」と自分が思っていた以上に褒めてもらいました。その時の経験が今回ボードゲームを制作し、こんな文章を書く原動力になっています。初めて自分の作品を認めてくれる人を見つけるまでは辛い期間ですが、正念場なのだと思います。自分が価値があると感じるゲームならば、諦めず改良を続け、色んな人に触れてもらうとよいですね。