符亀 @Hu_games
ゲームマーケット2017秋より参加させていただいております、符亀と申します。
拙作「マジカルカナグル」「愛羅武粋逸」「ロングロングマホウ」「超超長城」「ツミカブリ」「リーサルチェックメイト」「インヴァージョン」「アマロン」「バックハンダー」「皇継の書状」「サイクリアン」「シリアリアン」「バーグリアン」「レイリアン」「フォッシリアン」「エンジェリアン」については、ゲーム一覧ページをご覧ください。
- 【第2章】ジェントリアン 制作記【第2章 盛り上がってしまったライフすごろく】
- 2025/11/15 21:00
どうも、紳士です。また間違えました符亀です。
ゲムマ2025秋の新作、他人を進ませる紳士なすごろく「ジェントリアン」の制作過程での悪戦苦闘をまとめた記事、第2弾です。
前回は、久遠堂さんの「テオフィールの猫」から前作「エンジェリアン」と本作「ジェントリアン」が生まれた過程を述べました。
今回は、その「Fw: Re: テオフィールの猫」として生まれた試作品と、それをこねくり回した悪夢の試行錯誤についてまとめます。
・ライフすごろく(黄金期の春)
まず、4月27日の試遊会中にテストした、ver. 1について。
その場で付箋に丸書いて作った試作品すぎる試作品だったのと、引っ越すときに捨てたのとで、正確なルールを記載するのは困難です。覚えている範囲で書くと、
・ゴールしたら勝ち
・体力制で、体力が無くなったら一時的にコースから消える
・1〜5マス進める
・山札から数字が書かれたカードが毎ラウンド1枚めくられる
・進みたい数字を宣言し、進む
(この後、カードの数字と進んだマス数の差分だけダメージを受ける)
・他の人が宣言したのと同じ数字は宣言できない
・マスの効果で、体力が増減したり前後に進んだりする
・コースから消えている人は、最初にトークンを置く
・コースから消えている人がいる時、別の誰かの体力が0になったら、その人と消えていた人のコマの位置が入れ替わる
(消えていた人の体力が初期値に戻って復活する)
というルールだったはずです。
その他、「進んだマス数 (1〜5) をトークンでメモしておいて、全部使ったら毎ターン1ずつ減る」みたいなマジでいらないルールもあった気がしますが、まあそんな感じでした。
要は、「体力を管理し切ってゴールを目指すか、いいところで死んで入れ替わるか」というゲームでした。
このテスト、盛り上がったんですよ。
盛り上がっちゃったんですよ。
とにかく、「ここはいったん死んどくか」「うわもう死ねねえじゃん」「ちょっと殺すの早かったかも」みたいなパワーワードが飛び交い、なんかもう今日これが一番面白かったんじゃないのってぐらい盛り上がりました。
もう秋のゲームは決まったなと思い、ゲムマ春の準備に集中することにしました。
・ライフすごろく(混沌期の夏)
で、ゲムマも終わった6月上旬、ExcelとWordで作った比較的マシな試作品を用意して、秋向けのテストプレイ会に臨みました。

ご丁寧にサマリーも作っているので、変更点がわかりやすい
この時の変更点は、以下の通りです。
・「進め↔︎戻れ」の無限ループを生みうる移動マスを削除
・「前の人から何マス進むか決めて、後ろの人から動く」方式にし、前の人の方が自由度が高いが読みきれないように
・進めるマス数の選択肢が4択に減る
試したところ、確かに命のやり取りは面白い。
ですが、結局「いいタイミングで死んで良いタイミングで殺したヤツがぬるっとゴールする」ゲームになっており、最後の2〜3手番しか意味のないゲームになっていました。
かといって、じゃあそこだけを取り出すとすると、すごろくっぽくないし面白い命のやり取りが消えてしまう。
ん?これ何が悪いんだ?
・破滅と一筋の光
そんなわけで、ここからは怒涛の試行錯誤が始まりました。
コースや進むマスのバランスでなんとかできるか。無理だ。
モノポリーのように、ぐるぐる回って得点を稼ぐ形式にするのはどうか。これもダメだ。
4日連続でテストプレイしてみよう。うん、2日目で協議終了したしボコボコに言われたから根本からイジらなきゃだめだな。
やっぱ命のやり取りこそが面白いんだからそこに注力しよう。うん、最後ゲーすぎるけど一番感触はいい。
そんなこんなで、気づけば10回目のテストプレイ会に向かっておりました。
この頃は、最初の「体力制のすごろく」で「ゴールした人が勝ち」というシステムで行くことに決めていました。
フレーバーのテストも兼ね、いったんイラストを描いてテストプレイ会に向かいました。

体力を存在強度と見立て、なくなると爆発して並行世界に飛ばされるSFテーマにしようとしていた。ぶっちゃけ、GQuuuuuuXの影響を受けすぎている。
そこそこ盛り上がりはしたものの、残念ながら感触は悪く、さあどうするもんかと感想戦が始まりました。
そこで、ゲンゲゲームズのイリュージョンさんがこうおっしゃりました。
「結局、『ゴールすれば勝ち』だと、最後だけで勝負が決まるのでそれまでが無意味になる。何か積み上げるものがほしい。」
う〜ん、まあそれはそうなんすけど、体力とそれとの2パラメータあると要素多いかなって。
かと言ってモノポリー形式はもう試してますし。
「ゴールしたら得点デカいけど他の要素で勝ちきれないかも」みたいな形式がいいんでしょうけど、それにしても体力との兼ね合いがなあ。
いっそ体力の残量をスコアにしちゃうか?う〜ん。
そんな感じで煮え切らない返事をして、帰りの電車に乗り、寝過ごさないように頭を回していてふとヒラメキました。
体力、いらなくね?
この頃には本作の軸を体力制だと決めつけていましたが、冷静に考えると、それこそが「最後に復活すれば勝ち」という状況を作っている病巣なのでは?
じゃあそれを切除して、空いた枠に得点要素を入れればいいのでは?
いけるのでは?
・言い訳タイム
文章でまとめていると「それぐらい自分で思いつけや」感がありますが、違うんですよ。
私は古いゲームデザイナーなので、「ゲームのやらせたい体験を研ぎ澄ます」ような形でブラッシュアップしようとするわけです。
で、このときの「やらせたい体験」は「命のやり取り」なので、それを消し去るとか本末転倒なんですよ。普通は。
テストプレイヤーの意見を聞いてゲームの軸を変えてるようじゃね、良いゲームなんかできないんですよ。普通は。
なんですけども、今回はそれが良い感じにハマりました。
その理由として、制作中に「実はやらせたいこと」が生まれていたこと、それを得点制で表現できたことがあると思います。
どういうことか説明します。
本作で迷走しまくっている中で、私は悟りを開いていました。嘘です、ただレベルアップしただけです。
そこで至ったのが、ゲームとは結局のところ、「やらせたい行動をとってくれた人を褒める」装置なのではないか、という仮説でした。
そして、すごろくにおいては、それが「いい位置どりをした人が勝つゲームである」という形で現れるのではないかと考えていました。
そして、この「いい位置どりをした人が勝つゲーム」という理想に、真っ向から反していたのが「体力制でコースから消えたり現れたりする」ギミックでした。
だって、位置どり関係なくなるもんね。
という訳で、体力制という悪は消え去り、得点制のすごろくが生まれました。
また、いい位置どり、すなわち「先に進みたいがある程度は後手でいたい」の表現として、コースを構成するカードをチェックポイントとし最後尾に得点を与えるギミックや紳士というフレーバーもとんとん拍子で決まりました。読者が知りたいのここの着想だろなんで簡単に思いついちゃうんだよ。
本作のもう1つの特徴である「他人を進ませる」ギミックも、モノポリー式のときに試していたので再利用できました。ここ伏線として書いとけよお前いま初出しすんなよ。
そんなわけで、ついに「ジェントリアン」らしき形のゲームが出来上がりました。
これにて完成!この連載も終了!!
とはいかず、最終回の調整編へと続きます。なんせ、「ジェントリアン ver.1」から「ver.10」までファイルがあるので、このあと少なくとも10回はテストしているからです。じゃあそこも記事にして元取りたいよね!
あ、「ver.7.1」なんて名乗るふざけたファイルもあったので、少なくとも11回、でした。訂正してお詫びいたします。
ちなみに、イリュージョンさんのお言葉をいただいてから「ジェントリアン ver.1」というファイルを作るまで、テストプレイ会に7回行ってるそうです。
試遊会とかで「30はいってないっすけど、20回はテストしましたんで」とかほざいてたんですけどね。これ30いってますね。

その「7回」の1回。実際のツイートはこちら。この時の弱音はこちら。
・宣伝タイム
最後に宣伝タイムです。
ゲムマ2025秋では、土-N11で出展いたします!新作は、得点トラックがすごろく状になっているゲーム「超超市場」です。
これゲンゲゲームズさんか。
改めて宣伝タイムです。
われわれ符亀は、土-P26で出展いたします!新作の他人を進ませる紳士のすごろく「ジェントリアン」などを頒布します。セット割引もあるので、ぜひご予約をお願いいたします。

「テオフィールセット」ってなんだよ状態な人は、第1章を読もう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
