空葉堂(KUYODO) Silentalk_Spiel
こんにちは! 空葉堂(KUYODO)と申します。
ふだんは東京都新宿区で空葉堂書店という本屋さん運営等をしております。ゲームマーケット2025秋では『黙談-Silentalk-』を、販売させていただきます。協力ゲームで、コミュニケーション制限系で、150以上のパズルミッションが楽しめます。皆さまとお会いできますことを楽しみにしております☺️
- 🌀ボードゲームの自己充足性🌀
- 2025/10/6 18:10
コンサマトリー consummatory という語でも知られる「自己充足性」が、ボードゲームのどんなところにあるか。こんなテーマでボ哲コラムで書いてみました。
「ボードゲーム哲学」略して「ボ哲」プロジェクト詳細は前回エントリをご覧くださいませ☺️
「ボ哲」ことボードゲーム哲学は、「AI時代にボードゲームをもっと楽しむための読む遊び」を謳っております。
リンク構造を維持したまま「遊び」のように、このコラムをお読みになりたい方は、ボ哲Cosenseページへどうぞ。同じ内容をお読みいただけます。
✅ ボードゲームの自己充足性
「役にたつ」言説
ボードゲームを、コミュニケーションツールや学習教材として語る声がしばしば聞かれます。
つまり有用性を根拠とした、ボードゲームプレイを「善い」とする考え方です。これは、行為の結果を重視する功利主義的な発想であり、近代以降においていわば「普通」の考え方かもしれません。
一方で、この「役に立つから」という視点は、ボードゲームの核心を見失わせる危険性を孕むと思います。
盤外からの合目的性の侵入
ゲーム内には、「勝利を目指す」という目的が存在します。
ここに、ゲーム外から自己充足的でない目的が持ち込まれると、そのゲームの力学は歪み始めます。
そうなるとハイパーメリトクラシー的な強者がさらに有利となる空間へと、その場が変貌しかねません。例えば、「楽しめばいいじゃん」という言葉が、内輪のノリや共通の文化的背景(ハビトゥス)を持つ者だけが楽しめる状況を正当化し、初参加のプレイヤーや社交が苦手なプレイヤーを疎外するような状況が指摘されていました[寺島 2009]。
これはゲームプレイが、その目的達成のための気まずい「手段」へと堕してしまうということ。例えば、朝戸が指摘したように「ボードゲームを肴にして面白い話をする」が目的化して、ゲームに没頭することは悪いことであるかのように見なされ、プレイヤーが常に「面白い話をしなくては」と、ゲーム外の役割を演じることを暗に強いられる状況をつくります[朝戸 2010]。
これは遊びが持つ本来の面白さが、外部から持ち込まれた合目的性によって侵食される事態です。
全体主義と目的
アーレントは、全体主義への抵抗の砦として、それ自体が目的である活動の重要性を説いています。
「全体的支配はその目的を実際に達しようとするならば、「チェスのためにチェスをすることにももはやまったく中立性を認めない」ところまで行かねばならず、これとまったく同じに芸術のための芸術に終止符を打つことが絶対に必要である。全体主義の支配者にとっては、チェスも芸術もともにまったく同じ水準の活動である。双方の場合とも人間は一つの事柄に没入しきっており、まさにそれゆえに完全には支配し得ない状態にある。」[アーレント 1951]
アーレントが擁護するのは、いかなる外部の目的にも回収されない、自己充足性(コンサマトリー)です。
それは「ボードゲームのためにボードゲームを遊ぶ」という、一見するとトートロジーのような営為にこそ、人間の根源的な自由が宿るということ。
この「目的からの自由」は、哲学や人文学の探求とも共通する心の置き方かもしれません。
結果として「役に立った」
もちろん、ボードゲームを遊んだ結果として、新たなコミュニケーションが起こったり、「学んだな」と感じることはあると思います。
これは偶然的な副産物です。
あくまでプレイヤーがルールという閉じた世界に没入し、勝利という内的な目的に向かって真剣に遊んだ結果として、後から立ち現れるもの、それが例えば「学んだな」といったような有用性に対する実感の正体です。
reference:
アーレント, ハンナ(1951)『新版全体主義の起原 3——全体主義』大島通義+大島かおり訳、みすず書房、2017.
朝戸一聖(2010), 「ボードゲームをコミュニケーションツールにするための3つの大前提」, 2024.7.22最終閲覧.
寺島由人(2009), 「ボードゲームはコミュニケーションツールではない」, 2024.7.22最終閲覧.
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私が書いていないことまで、解説役として内容を補強するように話してくれていて、音声コンテンツとしても非常に面白い内容になりました。
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— ボードゲーム哲学@ハト (@Spiel_humanitas) September 20, 2025

