サイシュピール

合同サークルサイシュピールです。静岡を拠点とする、 スタジオくるくる(@StudioKurukuru) 輪骨舎(@lancelot_szok) Megaromatic game(@Megalomaniac_G)の3サークルで結成しています。

ゲーム紹介『非実在少年少女』
2024/11/5 16:22
ブログ

Megalomaniac Gameは2024年11月16・17日に開催される「ゲームマーケット2024秋」にて新作ボードゲーム『非実在少年少女』を販売します!

 

この記事では今作のルールアピールポイントを分かりやすく解説!

これさえ読めば大体OKといった内容になっています。

 

【①基本情報】

ゲームタイトル:『非実在少年少女』

プレイ人数:2~5人

プレイ時間:15分

価格:2000円

(記事中のコンポーネントはテストプレイ時のものであり、実際の製品とは異なる場合があります。ご了承ください)

 

【②概要】

今作のジャンルは「協力型パーティーゲーム」

プレイヤー全員は協力してゲームクリアを目指します。

 

ゲームで重要になるのは「架空の友達(イマジナリーフレンド)」と呼称される1人の人物です。

その名が示す通り、その人物は想像上の存在で、この世界に存在しません。

ゲームではプレイヤーは協力して、この「架空の友達」をみんなで作り上げていくことになります。クリアのためにはプレイヤー全員がこの人物のことを深く理解することが重要になるでしょう。

 

とは言え、これだけでは何のことだか分かりませんので、実際のゲームの流れを解説していくことにします。

 

【③ゲームの流れ】

ゲームは主にカードを用いて行います。準備の段階でこれらをシャッフルして山札を作ります。

そしてゲームを始める前に、まずは「架空の友達」に名前を付けてこの世界に生み出してあげましょう!(名前も無いと不便ですからね)

ただ、難しいことは何一つありません。

先程作った山札からカードを2枚引き……

 

メインボードの空き枠に差し込むだけで……

はい!「架空の友達」に「名前」と「年齢」が与えられ、新しくこの世に1人の人間が産まれました!(プレイヤーは名前を考える必要すらありません!)

プレイヤー達はゲームを通して、更にこの人物のことを知っていくことになります。

 

では実際にゲームがどのように進行するのかを解説します。

ゲームは主に「①君を知る」「②君を語る」「③君を想う」という3つのフェイズによって構成されます。順に見ていきましょう。

 

【1.君を知るフェイズ】

このフェイズではプレイヤーは時計回りに手番を行います。

重要になるのは「エピソードカード」と呼ばれるこのカード。これには1枚のカードに4つのエピソードが書かれています。

プレイヤーは手札として2枚のエピソードカードを持っており、手番ではその中から1つのエピソードを選択します。

そして選んだ「エピソード」が見えるようにメインボードの下に差し込みます。

こうして差し込まれたエピソードは「架空の友達」のプロフィールに加えられます。これで1つ「架空の友達」のことを知ることが出来ました!

その後手札が2枚になるように山札からカードを引いて、次の人の手番に移ります。

 

 

勿論始めは「架空の友達」についてわずかな情報しか知らないので、どのような人間かをイメージするのは難しいでしょう。

しかしプレイヤー同士で互いにカードを出し合うことで、少しずつ「架空の友達」の人となりが見えてくるはずです!

 

既定の枚数のカードがメインボード上に出たなら「君を知るフェイズ」は終了し、次の「君を語るフェイズ」に移行します。

 

【2.君を語るフェイズ】

このフェイズでは手番は無く、リアルタイムでゲームが進行します。

とは言えここでやることもシンプル。用いるのは「質問カード」という名称のカード。ここには選択肢が2つある質問が書かれています。

 

フェイズの開始時、この質問カードを3枚公開し……

プレイヤーは「2分間」、全員で「架空の友達」ならどちらの選択肢を選ぶかを自由に話し合います。

ここで重要なのは自分の考えを押し通すことではなく、他人がどのようなイメージを抱いているのかを知り、それを共有することです。

プレイヤー全員が「架空の友達」について共通の認識を持つことはクリアするのに不可欠です。自由に議論して、イメージを膨らましましょう。

 

「2分間」が経過したら、「君を語るフェイズ」は終了し、次の「君を想うフェイズ」に移行します。

 

【3.君を想うフェイズ】

このフェイズでは、全員同時に手番を行います。

 

まずは「質問カード」の山札からカードを1枚捲り、公開しましょう。

先程と同じように「架空の友達」ならどちらの選択を選ぶかを考えるわけですが、今回は相談してはいけません。

今までのゲームを振り返り、最適だと思う選択肢を選びましょう。

決まったら対応する「判定カード」を自分の前に伏せて置きます。

全員がカードを伏せたら、同時に公開します。

 

全てのプレイヤーが同じ選択肢を選んでいれば大成功!最も望ましい結果です!

しかし、異なる選択肢を選んでいるプレイヤーがいたなら……

ペナルティとしてプレイヤー達は少数派の数に等しいライフを失います!!

失敗するにしても出来るだけ失うライフが少なく出来ると良いでしょう。

 

この時プレイヤーのライフが0になったら即座にゲームオーバー!

そうでなければ質問カードの山札が尽きるまで、これを繰り返します。

 

質問カードの山札が尽きた時、まだライフが残っていれば見事ゲームクリアです!

 

 

【④制作意図】

今作は「特定の人に対して持っているイメージや固定観念」、いわば「偏見」や「各々の価値観」を題材にしたパーティーゲームです。

こういったタイプのゲームは数多く存在していて、有名なものだと『アンユージュアルサスペクツ』、最近だと『偏見プロフィール』などがあります。

実際今作のプレイ感や面白さの性質も、そのようなゲームと似たものであるのは間違いありません。

こう聞くと「わざわざ同じタイプのゲームを買う必要はないな……」となる方もいるはずなので、ここでは今作がそういった既存の作品とどう差別化をしているかを解説していきます。

 

まず既存の作品の考察から述べましょう。いわゆる「価値観推測ゲーム」は以下の様な形式であることが多いです。

 

「特定のものに対するイメージを考える人(=親)」「親がどのように考えたかを予想する人(=子)」が存在する。

②親は「特定のもの」に対してのどのようなイメージを持っているかを考える。

「特定のもの」は「存在しない人物の見た目(イラストや写真)」だったり「一緒に遊んでいる他プレイヤー」だったりする。

③親は先ほどのイメージを発表し、子はそれをヒントにして親の考えを推測する。

④親は正解を発表し、予想の成功失敗に応じて勝利点を得るなどの処理が入る。

 

……ゲームの進行方法の違いなど、細かなバリエーションは大量にありますが、概ねこのような形式です。

 

そして僕はこういった形式が「クイズ」と似た構造にあると考えました。

 

実際に例を出して解説しましょう。

「クイズ」では「出題者」「回答者」にクイズという形で問題を出します。

この時「出題者」が話すのは事前に決められた文章だけで、「回答者」側から質問などのアクションを取ることが出来ません。一方通行な関係と言えるでしょう。

そして問題に対し「回答者」は考えるわけですが、基本的にクイズ中に調べたり新しいヒントを得ることは出来ないので、「回答者」は事前の知識を元に答えを考えることになります。

最後に答えが発表されると、正解か否かという結果が示され、時には新しい知識を得るという面白さが得られます。

 

 

これを踏まえて既存の「価値観推測ゲーム」の形式を見ていきます。

まず「親」は「子」に「お題から得たイメージ」を伝えます。基本的にこれは一度だけで、それ以降「親」は「子」に情報を伝えられず、「子」の方も親と交信することは出来ません。

そして出題された後、大体のゲームでは「親がどのような価値観を持っているのか」を探ることは出来ません。

そのため「子」は「自分が普通だと思っている価値観」や「事前に知っている親の情報」を元に推測を行います。

答えが発表され、正解か不正解による感情の揺れ動き。時には価値観のズレが明らかになり、それを知る面白さを得られます。

 

こうして比べるだけで、「クイズ」と「価値観推測ゲーム」が非常に似た構造であることが見て取れます。

そして似た構造であるがゆえに、「クイズ」で問題になりやすい点についても、同様にあると考えられます。

 

最も重要な部分は「ゲームの中で新しく情報を得ることが出来ない」という点です。

そのため「クイズ」では事前に多くの知識を持っている人ほど有利です。また知識がある方が正解という成功体験を得やすいため、「クイズ」は知識を持つプレイヤーほど有利で楽しい遊びであると言えます。

逆にその点が初心者にはハードルが高く、避けられる要因にもなります。

 

「価値観推測ゲーム」では「クイズ」のように専門的な知識は必要ありませんが、代わりに「親」のことをどの程度知っているかが重要になります。

親しい関係にあれば、日常のシーンを思い返し、それら全てがヒントになるでしょう。逆に相手の事を知らなければ、薄い根拠に縋って推測をしなくてはなりません。

よくこの手のゲームは「仲の良い人同士で遊ぶのがオススメ」という売り文句が掲げられることがありますが、これは逆に知らない人同士だと本領が発揮されないということを端的に示しています。

 

 

ただ僕はこういった点が致命的な問題であるとは思いません。

実際クイズが面白い遊びであるのは疑いようが無いですし、「誰と遊んでもほどほどに楽しいゲーム」より「親しい人となら120%楽しめるゲーム」方が良いということもあるでしょう。

またそういった無茶ぶりがゲーム全体に気楽さをもたらしていたり、他人の意外な一面を知るきっかけになったりしています。

 

しかし個人的にパーティーゲームは「状況を選ばず遊べて、誰とでもほどほど楽しい」方が好みです。

ルールが簡単でプレイのハードルが低いことから色んな場所で遊べるのが魅力だと思いますし、「親しい人と遊ぶと楽しい」と言えども同じメンツで何度も遊ぶタイプのゲームではないですから。

 

そこで僕は「価値観推測ゲーム」の「面白さがプレイヤー同士の親密度に依存しすぎてしまう」部分を解決したいと考えました。
 

 

ではそのために今作はどのようなことを試みているのか。それを解説するためにゲーム中のプレイヤーの心理を想定してみます。

①ゲーム開始時、プレイヤーはそれぞれ「架空の友達」に対してバラバラの人物像を抱いている。

②プレイヤーAが自分のイメージにピッタリ合う「エピソードカード」をプレイする。

③他プレイヤーはそれを見て、プレイヤーAが想定しているであろう人物像を推測する。

④自分の想定している人物像とピッタリ合っているなら問題なし。もしズレていると感じるなら自分のイメージに修正を加える。

⑤修正したイメージを元に次のプレイヤーはまた「エピソードカード」をプレイする。

⑥この③~⑤を何度も繰り返すことで、全員で共通認識を作り上げていく。

 

重要なのはプレイヤーが「親」と「子」という一方通行の関係ではない点、そしてカードを用いることで互いに意思疎通が取れる点です。

ゲーム中では「自分のイメージを相手に伝える機会」、「相手のイメージを推測する機会」、「自分のイメージを修正する機会」が何度も与えられます。

このため互いに面識が無いもの同士でも、ゲームの中で相手がどう考えているのかを知ることが出来るし、逆に自分がどう考えているかを伝えることが出来ます。

勿論親しい人同士の方が意思疎通は取りやすいでしょうが、初対面同士であっても比較的ゲームが楽しみやすいようになっているはずです。

 

 

少し長くなったので話をまとめます。

前述の通り、既存の「価値観推測ゲーム」は「クイズ」と似た構造のものが多くありました。

しかし今作の「カードという限られたツールを用いて互いに意思疎通を取り合い、少しずつ共通認識を作り上げていく」という遊びは、どちらかといえば「制約がある中で意思疎通を取り合う」、いわゆる「コミュニケーションゲーム」に近い構造になっています。

 

「価値観」や「偏見」という題材に対して、「クイズゲーム」的なアプローチを取るのか、「コミュニケーションゲーム」的なアプローチを取るのか。

違いといえばそれだけのことですが、同じようでちょっと異なるプレイ感を味わえるゲームに仕上がっているはずです。

 

 

【⑤どこでも誰とでも、テンポよく遊びやすく】

そして今作についてもう1つだけ言及したいこと、それは「誰とでも遊びやすいゲーム」を目指して制作したということです。

互いに面識がない人同士でも遊びやすく、という点は先ほど長々述べましたが、それ以外にもボードゲームに馴れていないプレイヤーが遊びやすい作りを意識しています。

 

例えば「君を知るフェイズ」では手札の限られたエピソードの中から選択する事しか出来ませんし、「君を想うフェイズ」では常に2つの選択肢のどちらかを選ぶだけです。

また「名前」と「年齢」といった一見みんなで話し合って決めた方が楽しそうな要素さえ、プレイヤーに選択する余地はありません。

 

こういった作りはゲームに慣れているプレイヤーにとっては物足りなく感じるかもしれません。

この手のゲームによく見られる「自由回答」のゲームはプレイヤーに無限の選択肢を与え、またデジタルでは実装が難しいことからアナログゲーム特有の楽しさを秘めています。

実際プレイヤーに要求するスキルが高いほど、それが上手く行った時の快感も増すことでしょう。しかし同時にプレイするハードルも上がってしまいます。

 

そういった中で僕が最も恐れたのは、慣れていないプレイヤーが膨大な選択肢に思考が停止し、ゲームが停滞してしまうことでした。

ダウンタイムの問題はどんなゲームにもついて回るものですが、そもそものゲーム時間が短いパーティーゲームにおいてこれが起きてしまうのは本当に致命的で、ゲームの印象が極端に悪くなってしまいがちです。

これが起きるのを防ぐために、勿論ある程度の悩ましさは保ちつつも、出来るだけ選択肢を減らすことを心がけました。

そのおかげで誰と一緒でも、テンポ良くストレスなく遊べるパーティーゲームになっていると思います!

 

 

【⑥まとめ】

……以上が新作『非実在少年少女』の紹介でした。

今作は新規性があるゲームというよりは、しっかりとした面白さがあるパーティーゲームを目指して制作しました。

そのため説明だけでは少し地味に見えるとは思いますが、誰とでも遊べる良いゲームだと思います!良ければプレイしてみてください!

 

冒頭に述べた通り、今作は11/16-17に開催される「ゲームマーケット2024秋」にて販売されます。

場所は「土N-20:サイシュピール」ブースです。販売は土曜のみなので注意してください!

 

もしこの記事を読んで少しでも興味を持たれた方は是非足を運んでみてください!よろしくお願いします!

 

それではここまでお読みいただきありがとうございました!