符亀

ゲームマーケット2017秋より参加させていただいております、符亀と申します。
拙作「マジカルカナグル」「愛羅武粋逸」「ロングロングマホウ」「超超長城」「ツミカブリ」「リーサルチェックメイト」「インヴァージョン」「アマロン」「バックハンダー」「皇継の書状」「サイクリアン」「シリアリアン」については、ゲーム一覧ページをご覧ください。

新作ワーカープレイスメント「RATORO」について
2023/4/22 12:30
ブログ

皆様こんにちは、符亀です。

最近、twitterで新作のトリックテイキング「シリアリアン」に多くの反響をいただいており、ありがたい限りです。ご予約もたくさんいただいており、非常に感謝しております。

が、今回はそっちではなく、Sui Worksさんのブースにて頒布予定のもう一つの新作、ワーカープレイスメントの「RATORO (ラトーロ)」の記事です。「RATORO」の方はあまり広報できていなかったので、今回ゲームデザイン担当として、そのシステムについて解説しようと思います。「シリアリアン」の方もゲムマブログでは全然宣伝できてねえだろと言ってはいけない。

本作は、「2時間以上のゲームはまだ怖いけど、ドミニオンとかの戦略性のあるゲームは好きだしテラフォーミングマーズとかならできるよ」という人から、「ワーカープレイスメントの最適解を探る駆け引きが好き」「ゲーム中にアクション効果が成長してやることが変わり続けるのが好き」「プレイごとに盤面が変わって最適なムーブを毎回探すゲームが好き」な人にオススメできるゲームです。ですので、そんな方々は特にお読みいただければと思います。

 

「RATORO」にはいくつか特徴的なシステムがございますが、代表的なものは以下の4つです。

  1. ワーカーを置くアクションスペースがカードであり、ゲームごとに変化する。
  2. カードにワーカーを置くためには、基本的に資源を捧げものとして払わないといけない。
  3. ラウンド終了時に資源を支払って、そのカードを手元に集める(から、盤面がどんどん変わる)。
  4. カードにはタグが付いており、集めたタグの数に応じてアクションが強化される

これらを順に説明していきます。

 

1. アクションスペースがカード

本作は、コマを効果が書かれたアクションスペースに配置してその効果を得るという流れを繰り返してゲームが進む、ワーカープレイスメントと呼ばれるジャンルのゲームです。

例えば、黒色の資源が3つ欲しいなら、まず「黒色の資源を2つもらう」と書かれたカードにコマを置いて2つ、次に「黒色と茶色と白色の資源を1つずつもらう」に置いてラスト1つを集めるというイメージです。

盤面のイメージ (テーブルトップシミュレーターで再現)


ワーカープレイスメントには、主にアクションスペースがボードに描かれているものと、カードになっているものがあります。本作は、後者のカード形式です。

この形式では、プレイするたびに出てくるカードが変わるため、遊ぶたびにゲーム展開が変わります。特に本作では、後述のようにカードが各プレイヤーに購入されて場から消える(そしてその分補充される)ので、非常に入れ替わりが激しいです。

 

ではその分展開が荒れてバランスもクソもないのかというと、そんなことはありません。ないはずです。

なぜかというと、私の作品の中で一番テストプレイを重ね、カードリストを約20回にわたって更新しながら、念入りに調整を重ねたためです。その過程で何度もプレイしましたが、それでも飽きることなく新しい戦略を思いついたりもしていますので、リプレイ性は高いと思います。最初作るときに考えてなさすぎとも言う。

 

2. 捧げものが必要

「RATORO」では、カードにコマを置く際、資源を「捧げもの」として払う必要があります

この捧げものは専用の捧げもの置き場に置かれ、支払われるたびにたまっていきます。


そしてカードの効果には、この捧げもの置き場から資源を得るものがいくつか存在します。

具体的には、「(捧げもの置き場にあれば)全ての資源を1つずつもらう」とか「1種類を選んで(あるなら)最大4つまで得る」とか「(あるだけ)1種類を全部得る」とかがあります。「いついくか」のチキンレース的なかけひきも、本作のポイントの1つです。

なお、本作にはウシのような「ウカ族」とネズミのような「スーマ族」の2種類のコマがあるのですが、このうち1人1個しかない「スーマ族」のコマは、置く際に捧げものがいりません。

それどころか、他人の「ウカ族」コマの上に乗せて(つまり他人が既に置いたカードに)配置でき、その場合は捧げもの置き場から好きな資源を1つもらえます。

ボーナスのために他人がいいところに置いてくれるのを待つか、自分の置きたいところに先に置いてしまうか。どちらを選択するかは、プレイヤーの皆さんの自由です。

 

なお初心者的には、資源が無くなっても「スーマ族」コマを使えば1回だけ捧げものなしで効果を使えるので、「スーマ族コマ」が資源を使い切っても即詰みにならない保険としても働いてくれます。考えればどこまでも戦略的にいけますが、ゲームの展開を見通せていない初見でも楽しく遊べるのが、「RATORO」のいいところです。

かわいい「ウカ族」と「スーマ族」のコマ。木駒にプリント印刷がなされています。

 

3. カードを手元に集める

カードの効果で資源を集めたら、それを使ってカードを集めます。ゲームのストーリー的には「支援してその施設のパトロンになる」のですが、ここではわかりやすく「買う」などと表現します。

重要なのは、この購入によって場からカードが消えることです。買われたカードには買った本人すらコマを置けないので、買われるたびにアクションスペースが消えます。

その対策として、ラウンド終了時にカードが補充されます。よって結果的には、ラウンドごとに場のカードの約半分が入れ替わります。そのため、ゲーム中ずっと同じことばかりしている、ひたすらあのカードにコマを置くだけのゲームになる、といった問題が起こりにくいのが特徴です。

なお、数枚だけですが「ラウンド中にカードを買う」カードもあり、そのカードの効果を使うとラウンド中にアクションスペースが減ります。ワーカーを置く以外のインタラクションとして、上級者の皆様には楽しんでいただければと思います。

 

まあこれだけ自由度が高くて選択肢が毎回更新される分、ラウンドごとに何をすべきか考え直さないといけないのは正直しんどいのですが、Sui Worksさんが全カード効果をアイコン化してくださったので効果の把握はしやすいと思います。私も、悩めるが迷いすぎないぐらいのカード枚数になるよう、初期からカード種類を半分に減らして調整をがんばりました。それでもダメな人はすみません。

カードの例。アイコン一覧も説明書に付属するので安心。


このゲームは1ラウンドが濃厚なので、ラウンド数は4ラウンドしかありません。短い分、全力で考えていただければと思います。逆に言うとね、10分でできる重ゲーとか作ってた短時間至上主義マンが頑張っても4人プレイだと1時間未満にできなかった時点でね、そういうことなんですわね。

 

4. タグ

カードにはタグが付いており、ゲーム終了時にこれをいくつ持っているかで点数を計算します。

得点の計算方法も「1個3点」やら「個数が多いほど1個の点数が上がる」やら色々ですが、まあ集めれば集めるだけ得点が伸びます

タグの一覧。かつてこの地で活躍した氏族たちの家紋的なものという素敵な設定が入稿直前にできました
 

ですが、タグを集めたときにうれしいことは、これだけではありません。

いくつかのカードの効果は、「このタグの数だけこの色の資源をもらう」のように、タグを集めているほど強くなります

よって、タグを集めたらいっぱい資源がもらえるのでさらにタグがついたカードが買えるのでさらに…という好循環が生まれます。

とりあえずタグがいっぱいついているカードをいっぱい買えばなんとかなるので、方針が立ちやすく何をしていいのかわからなくなるリスクが少ないです。


なお、本作では最大で1つのタグを7つまで集められるのですが、その状態で「そのタグの2倍の数まで資源を得る」カードにコマを置けば14個の資源がもらえます。

このインフレっぷりも本作の魅力で、4ラウンドという短さを感じさせない満足感を与えてくれると思います。

 

以上、本作の特徴的なシステムを紹介いたしました。

これ以外にもまだまだ紹介したいポイントはございますし、ヤバいカードも何枚もあるのですが、それらは今後の広報や実際のプレイのお楽しみということで。

「とにかくカードを買ってタグを集めればインフレしていく」というカジュアルな遊び方から、「今見えるカードから一番得点効率のいい動きを見極めつつ的確に相手の邪魔をする」ガチなプレイまで、幅広い遊び方ができるゲームに仕上がったと思います。

アークライト・ゲーム賞、ゴールデンボックスボードゲームアワード、その他名誉ある賞の選考委員の方々、DMお待ちしております。

この記事で「RATORO」に興味を持ってくださった方は、ぜひゲームページ説明書をご覧ください。

セット割引がお得な予約も行っておりますので、そちらもぜひ。頒布はSui Worksさんのブース【土曜31】で行われ、私のブース【土曜31】に来てもやばいトリテとかやばい過去作とかしかないことにはご注意ください。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。