文学ゲーム全集 @bungakugame
ゲーム作家米光一成が「有名文学作品をモチーフにして、ゲームをつくってみようじゃないか。そして、作ったゲームをずらーっと並べて『文学ゲーム全集』を!」と企画しゲームづくり道場を開催!道場主と道場生による文学ゲーム15作品。
- 「わんわんかるた」の元ネタ、太宰治の「蓄犬談」がいかに面白いか語らせて
- 2019/5/23 16:21
太宰治の「蓄犬談」、ほんと、物づくりやなんらかの表現をしてる人なら、めちゃめちゃ胸に響くはず。最高に笑えて感動する短編だから青空文庫でぜひ。さくっと読めます。
わんわんかるたの取り置き予約はこちら
作家である主人公の一人語り。
読んでると「あ、こいつちょっと認知が歪んでるな?」ってわかるんだけど、語り手本人は気づいてない。書き出しはこう。
〈私は、犬については自信がある。いつの日か、かならず喰いつかれるであろうという自信である。私は、きっと噛まれるにちがいない〉
犬への憎しみ表現がいちいち極端で、文学的。
〈私の畜犬に対する日ごろの憎悪は、その極点に達した。青い焔ほのおが燃え上るほどの、思いつめたる憎悪である。〉
〈畜犬に好かれるくらいならば、いっそ私は駱駝に慕われたいほどである〉
犬への対策もいちいち真面目。
〈私は、まじめに、真剣に、対策を考えた。私はまず犬の心理を研究した。〉
でも実行策はしょぼい。
〈私は、とにかく、犬に出逢うと、満面に微笑を湛えて、いささかも害心のないことを示すことにした。〉
結果。
〈ここに意外の現象が現われた。私は、犬に好かれてしまったのである。尾を振って、ぞろぞろ後についてくる。〉
そのうち、家までついてきた子犬を拾って飼っちゃう。
名前までつけちゃう。
〈私はしかたなく、この犬を、ポチなどと呼んでいる〉
〈犬は、きょろりと眼を動かし、いや味を言い聞かせている当の私にじゃれかかる。なんという甘ったれた精神であろう。〉
ポチのことをぼやき、
〈私はポチを愛してはいない。恐れ、憎んでこそいるが、みじんも愛しては、いない。〉
と言い張るものの、妻からはツッコミが。
〈「でも、ちょっとポチが見えなくなると、ポチはどこへ行ったろう、どこへ行ったろう、と大騒ぎじゃないの」〉
いろいろあって、作家はポチを毒殺する決意をするが……。
顛末は、ぜひ読んでみてください。
わんわんかるたの取り置き予約はこちら