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ゲーム概要
- 両面がオモテの変則トランプです
- 通常のトランプと組み合わせて遊びます
- 遊び方はオンライン説明書でご案内
プレイ人数 | 1〜8人 | プレイ時間 | 3〜30分 |
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対象年齢 | 6歳〜 | 価格 | 100円 |
発売時期 | 2020春(開催自粛) | 予約 | 不可 |
ゲームデザイン | deztec | イラスト・DTP | イラストAC |
ゲーム詳細
栃木県真岡(もおか)市の南西部に「鷲巣(わしのす)」という地域があります。
『鷲巣トランプ』は、「鷲巣の町域」を絵柄とし、真岡の伝統工芸「真岡木綿」を地紋とした、「両面オモテ」の変則トランプです。
絵柄は「スペード」「ダイヤ」「クローバー」「ハート」に類するもので、「鷲巣(わしのす)」となります。「鷲巣の4」「鷲巣のキング」などと各カードを呼称します。
コンポーネントは「鷲巣1~鷲巣13」の計13枚と通常のトランプです。手品用のダブルフェイストランプとは異なり、表裏の絵柄と数字は一致しています。
リンク先で、鷲巣トランプをつかったトランプゲームの遊び方を、たくさん紹介しています。スマホでも見やすいサイトです。コンポーネントにQRコードを記載していますので、スマホ等で表示しながら遊んでいただければ幸いです。
鷲巣トランプは通常のトランプと組み合わせて遊びます。絵柄のひとつを鷲巣トランプで置き換える、ランダムな絵柄の13枚を鷲巣トランプで置き換える、通常のトランプに鷲巣トランプを単純に追加する、という3種類の組み合わせ方があり、その選択によってゲームの表情が変化します。
大きく変わるゲームもあれば、ほとんど何の変化もないゲームもあります。よく知っているつもりのゲームも、鷲巣トランプで遊ぶことで、これまで気付かなかった意外な一面と出会えるかもしれません。
BOOTHにて6/1より通販を開始する予定です。『鷲巣トランプ』はゲームマーケットでは500円で頒布予定ですが、通販では送料、包装料等を加味して800円程度となる見込みです。
【製作ノート】
鷲巣トランプは、名刺印刷の特性を活かしたゲームを考えている中で、生まれました。
私(deztec)が2019年秋のゲームマーケットに初参加した際は、100均の商品の組合せでゲームを作りました。「説明書以外にオリジナルのコンポーネントを用意できない」という制約でゲームを考えるのは楽しかったのですが、もともと飽きっぽい性格でもあり、2020年春のゲームマーケットでは、名刺印刷を解禁しようと思いました。
私が利用を検討していた「安価な名刺印刷」には、次のような特徴があります。
- 一般的なトランプ、ゲーム用カードと縦横比が違う
- 「扇持ち」すると透ける
- 傷、折れが生じやすい
「縦横比問題」は、既存のカードと組み合わせてゲームを作る場合に課題となります。独自のカードだけでゲームを構成すれば、とりあえず問題ありませんが、一般的なゲーム用スリーブがピッタリこず、長辺側がキツく、短辺側がブカブカになることも課題です。トランプ等と縦横比を揃えると、価格がハネ上がります。
「透け問題」は、「山札の状態で透けない」程度を目標とするなら、裏面を濃色にする、表裏に地紋を付ける、裏面の模様を適度な細かさにする、といったデザイン上の工夫によって、実用上の問題を回避できます。カードスタンド使用時の透け具合は、どこまで気にすべきか、難しいところです。最も対応が難しいのは、「ババぬき」などで必要になる「扇持ち」です。光にかざし、相手が近くに寄ってカードを見る状況でもカードが透けないためには、遮光紙を使用する等の対策が必要となり、大幅な価格アップを覚悟しなければなりません。
「傷、折れ問題」は、傷や折れによってカードを個体識別できるようになり、カードを伏せても情報が読めてしまうことが、ゲーム進行上の課題となります。対策のためラミネート加工したり、プラスチックカードを採用したりすると、かなりのコスト高になります。
2019年春、2019年秋のゲームマーケットにて、新作ゲームコーナーでたくさんの作品を調べました。(データを取らず、たくさん見て印象を得ただけですので、いい加減な調査です)
「縦横比問題」は、名刺印刷なら単純に諦めるのがスタンダードなようでした。既存のカードと組み合わせて遊ぶゲームはほとんどなく、独自のカードだけで遊ぶなら問題ないわけです。
「傷、折れ問題」も、スルーがスタンダードのようでした。山札からカードを引いたり、場にカードを捨てたりする操作でカードが傷つくことはあまりありませんが、テーブルに並べたカードをめくる操作は傷・折れ危険が高いです。しかし名刺印刷で神経衰弱やカルタに類するゲームがたくさん作られていました。どうしても気になるならスリーブに入れればよく、「名刺用スリーブ」といった商品も世の中にはあるからOK、ということでしょうか。
「透け問題」は、一定の対策をするのがスタンダードのようでした。まずデザイン上の工夫で、山札状態でのスケを防止。さらにルール上の工夫で、「扇持ち」が不要となっています。「ババぬき」のようなカードの移動をしたい場合、渡す側がカードを選択する、カードをテーブルに並べて相手に選ばせる、などとするわけです。スピーディーさが一部犠牲になりますが、決定的な欠点とはならない工夫です。なお、カードスタンド対応までは考えないのが一般的だと認識しました。
さて、自分はどうしようか、と考えます。
詳細未発表の作品『ロンドンバス』は、スタンダードな対策をして、名刺印刷を採用した作品です。「縦横比問題」は、オリジナルのカードだけで構成するゲームなので、大丈夫です。「透け問題」は、手札は手の中またはテーブルの下に隠しますので、人に見られません。手札はテーブルの上に伏せて出すので、下に照明があるガラステーブルでもなければ、透けには対処可能です。「傷・折れ問題」は、角丸にすることで、最小限の対応としました。
同じく詳細未発表の作品『坊主ガチャESPER』も、スタンダードな対策をしています。「縦横比問題」は、オリジナルのカードだけで構成するゲームなので、大丈夫です。「透け問題」は、プレーヤーは山札しか見ないため、山札の状態で透けなければOKです。「傷・折れ問題」は、スルーとしています。『坊主ガチャESPER』において、カードを個体識別できることはゲーム上の不都合となりません。そのため、百人一首のカルタをモチーフにしたデザインの都合もあり、カードの角丸加工もしないことにしました。「百人一首ベースのゲームとして、きちんと100種類のカードを用意する」ことにコストをかける判断です。
本作品『鷲巣トランプ』の構想を具体化したのは、上記2作品の後になります。名刺印刷をどう活用するか、ずっと考えている中で、何か「引っ掛かり」がありました。ハッキリとは見えないのだけれども、逆転の発想によって生み出されるものが存在する、そのことだけは、わかっていました。
話は変わりますが、私は数年前まで、栃木県に住んでいました。真岡市は観光都市で、私も何度か訪れています。真岡の地図を眺めていたとき、鷲巣という地名が目に入りました。興味を持ち、現地を訪れたところ、平坦な土地に田んぼ広がる静かな地域でした。強い印象はありません。福本伸行『アカギ -闇に降り立った天才-』により「鷲巣」の2文字が著名になったこととは、無縁の土地のように見えました。
『アカギ』といえば、約20年にわたり連載された鷲巣麻雀が印象的です。通常の麻雀牌の一部をガラス牌に置き換えた鷲巣麻雀では、手牌の一部が相手に見えることで、通常の麻雀とは一味違った楽しみが生まれていました。このアイデアは、いろいろ応用が利くように思います。
2019年秋のゲームマーケットで、私は「レガシー系アブストラクト」と銘打ち、様々な作品を発表しました。その中に、既存のゲームの運要素を減らし、完全情報に近いゲームに改造したらどうなるか、チャレンジした作品がありました。『神経衰弱』をベースにした『メモする神経衰弱』、『スゴロク』をベースにした『カエサルは賽を投げない』などです。
「完全情報ゲームにするのは、やはり、やり過ぎだった」と反省する結果にはなりましたが、「公開情報を適度に増やす」のは、今後も挑戦し続ける価値のあるテーマだという手応えも得られました。
こうした背景のもと、「栃木県真岡市鷲巣をデザインのモチーフとした両面オモテのトランプ」というアイデアが生まれました。
「縦横比問題」は、鷲巣トランプは通常のトランプと組み合わせて使うので、一見、問題になりそうです。確かに、カードシャッフルなどにおいて、少々の違和感は否めません。しかし、この「違和感・異物感」は、むしろ有用だと考えました。
通常のトランプに比べて鷲巣トランプは縦長で、目立ちます。鷲巣トランプは、目立つことに意味があります。せっかく裏面に情報を開示しているのに、ステルス性能を発揮されては価値がありません。手札に鷲巣トランプがあることも、異物感によって意識してもらいたい。ついつい「慣れ」でふだん通りの遊び方をされてしまうのでは、もったいないのです。
また鷲巣トランプは、遊び終えた後で、通常のトランプと再び分離して保管することになります。完全に縦横比が同じだと、この分離・保管が手間です。鷲巣トランプは少し縦長なので、簡単にトランプと分離できます。
トータルで見て、鷲巣トランプが名刺サイズであることで、ゲーム体験は「よくなっている」と私は判断しました。
「透け問題」と「傷・折れ問題」は、鷲巣トランプではゲーム進行上の問題になりません。鷲巣トランプは「情報を伏せない」カードであるため、「透けや、傷や折れによって、カードを伏せた意味がなくなる」という問題そのものが存在しません。
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『鷲巣トランプ』の発表に先立ち、先行ゲームに同内容・同名の作品がないか、ネットで少し調べました。
まず、手品用の「ダブルフェイストランプ」というものが、昔から存在します。その中には、表裏同絵柄、同数字のものも含まれるようです。しかし通常のダブルフェイストランプは表裏別絵柄、別数字となっていることがわかりました。表裏同絵柄、同数字のダブルフェイストランプは、存在はするが入手困難であり、価格も高く、そもそも通常のトランプと組み合わせて遊ぶことを想定していない商品なので、鷲巣トランプとは競合しないと認識しました。
アイデア自体は競合することになりますが、特許等で独占されているアイデアではなく、私も「両面オモテのトランプ」というアイデアを独占するつもりは全くないため(類似品が登場しても全然構わない)、問題ないと考えます。
次に、「スケルトントランプ」と呼ばれるトランプが多数存在することがわかりました。しかしそれらは、裏からは数字も絵柄も判別できないようになっています。
唯一の例外が、畑健二郎『ハヤテのごとく! 第39巻 特装版』(小学館)に添付された『ハヤテのごとく! キャラ入り スケルトントランプ』です。半分のトランプが、絵柄・数字を含めて透過素材に透過インクで印刷されており、両面から絵柄と数字を判別できます。このアイデアの特許、実用新案の登録は、私が探した限りでは、見つかりませんでした。
アイデアが無登録でも法的に保護される社会においては、後発の『鷲巣トランプ』は小学館の許諾を要する可能性があります。しかし日本には、無登録のアイデアを保護する制度がありません。さらに意匠権の登録がないことも確認しましたが、透けることで両面から絵柄・数字を確認できる意匠と、両面に同じ絵柄・数字が印刷されている意匠とでは、機能は共通するものの意匠としては別物であるため、もとより意匠権侵害の可能性はありません。
遊びやすさについては、『鷲巣トランプ』の方が、『ハヤテのごとく! キャラ入り スケルトントランプ』に勝っている点がいくつかあります。スケルトンの数字は裏側から見ると左右反転となり、パッと見には判別し難い場合があります。その点、両面に正方向で数字を印刷している『鷲巣トランプ』は見やすいです。
また、『ハヤテのごとく! キャラ入り スケルトントランプ』は各絵柄の半分がスケルトンになっており、「スケルトンカードだからこの絵柄である」という判断が成り立ちません。トランプの絵柄を踏襲したことには、「既存のトランプゲームのルールに一切手を加えなくてよい」という非常に大きな利点がありますが、ゲームカードとしては絵柄の判別がしにくい欠点があります。鷲巣トランプは「鷲巣」という新しい絵柄を導入しており、一見して判別は容易です。
逆に『鷲巣トランプ』の欠点のひとつは、「13枚しかない」ことです。半分をスケルトンにした『ハヤテのごとく! キャラ入り スケルトントランプ』が説明書で『ポーカー』を推すのは合理的です。スケルトントランプだけで「ワンペア」を見せることができるからです。『鷲巣トランプ』は1~13が各1枚しかないので、ゲームが劇的に変わるほど、多くの情報が公開されません。だからこそ、数多くのトランプゲームに容易に組み込めるのですが、それは欠点でもあるということです。
ピンゾロゲームス様の『両面トランプ』は、単独で遊ぶ想定のカードゲームです。絵柄がなく、地紋の色がスートになっており、オモテとウラとでスートも数字も異なっているのが特徴です。機能的に一般的なダブルフェイストランプと類似しており、『鷲巣トランプ』とは異なる作品だと判断しました。
『鷲巣トランプ』という名称は、鷲巣(わしのす)という地名を直接の由来としており、不正競争防止法その他の法令には違反せず、「社会的慣行の中で許容される範囲内の言葉のもじり」だと私は判断しています。この点については、様々な見解があるかと思います。漫画『アカギ』の鷲巣麻雀が発想の源のひとつであることは事実ですし、鷲巣麻雀の知名度に乗っかる意図も、否定はしません。
ただ、時計ブランドの「フランク三浦」は「フランク・ミューラー」が使用停止を求めた裁判に勝訴しましたし、吉本興業の土産用菓子『面白い恋人』は、『白い恋人』の石屋製菓に訴えられたものの、デザインを変更し「混同のおそれがなくなった」ことをもって、賠償金なしの和解となっています。本作品『鷲巣トランプ』が、漫画『アカギ』の関連グッズと混同される要素はなく、したがって「問題ない」との認識です。(全ての人のあらゆる誤解を回避することを現行法は求めていない、と私は理解しています)
また『鷲巣トランプ』という言葉の使用例は、2020年5月10日時点のGoogle検索では16件しかヒットせず、「既に一般化している言葉を横取りする名称ではない」とも考えています。
最後に絵柄について。地図には著作権がありますが、町域そのものに著作権はありません。鷲巣の町域を塗りつぶした図形そのものは誰の著作物にもあたらず、自由に使用できるものと認識しています。
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鷲巣という地名は全国に4か所あるとのこと。
4ヵ所あるということは、これでトランプと同じく4スート用意できるわけです。「真岡市鷲巣」「袋井市鷲巣」「杉戸町鷲巣」「茂原市鷲巣」……個人的には魅力を感じますが、ゲームとして面白くなるアイデアが浮かばず、棚上げにしました。何か思いついた方は、チャレンジしてみてください。
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『鷲巣トランプ』のアイデアは2020年春に浮かび、2020年5月10日に一通りまとまりました。
公表は2020年5月28日となります。