カラメルカラム @Caramel_Column
神保町にあるゲーム会社です。アナログ・デジタル問わず、ゲームを作っています。
ブログ一覧
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- 『THE 修学旅行の夜』のルールができるまで
- はじめてゲムマに出展した、2016年12月時点で「次のゲムマまでに新作を作ろう」とは考えていた。 最初に頭に思い浮かんだのは「大喜利系」だ。その名もズバリ『THE 大喜利』。一周まわって大喜利をテーマにした大喜利ゲームって新しいと感じていた。しばらくは「もうこれで決まりだな」と思っていたものの、一週間くらいして「やっぱりあんまり面白くないかも」と我に返り却下した。 次に考えたのはケイドロだ。『スコットランドヤード』よろしく、ボードを使ったゲームも考えてみたかったからだ。それに加え、前作は残業をテーマにした作品だったこともあり、プレイヤー層を広めるためにも学生にターゲットを絞るのはアリかも、と感じていたのだ。もちろん名前は『THE ケイドロ』。ドロケイにするか、ケイドロにするか、それが問題だ。という以前に、あまりゲーム的に面白い要素を詰めにくいと判断して、早々に却下した。ここまでで、12月終了。ぼんやり考えるだけじゃ埒が明かない、ということに気づくには充分な時間だった。 大喜利とケイドロがあまり面白くなりそうにないなと思ったのは、選んだテーマ自体にゲーム性が強かったからだと反省した。大喜利やケイドロは、自主的なスポーツマンシップ精神がある程度求められるかもしれないけど、元よりゲーム的な遊びの部分がある。『THE 残業』の個人的に気に入ってる点は、残業というあまりゲーム性のないテーマを軸に、そのフレーバーを感じつつゲームとして成立させたことだった。そうだ、テーマ自体にゲーム性はそれほど必要ない。テーマに沿って、それに納得できるゲーム性を付与してあげる方が作る側としては面白いはずだ。 ということを考えて、思い至ったのが修学旅行の夜だった。明確なゲーム性はないものの、修学旅行の夜から連想されるキーワードは多い。「枕投げ」「布団の中で盛り上がる恋バナ」「先生の見回り」「女子の部屋に潜入する」などなど。どこを切り取っても、ゲームとして味付けできるコンセプトを持っていそうだった。それに、前作の残業と比較して学生ターゲットで作りやすい。これは良さげだ、と思い『THE 修学旅行の夜』を作るに至った。 テーマが決まってから大枠のルールを固めるまでは、比較的安産だった。元々人狼系のゲームを作りたかったこともあり、正体隠匿系が面白そうだとまず考えた。修学旅行の夜で隠匿といえば、誰が誰を好きなのかと盛り上がる恋バナがメインになるだろう。それに、やっぱり枕投げだ。トークのみで展開する人狼系よりも、『レジスタンス』や『ブラッドバウンド』のようになんらかのアクションを強制した方がテーマを活かせそうだと思った。人狼系で勝敗を決するためには、なんらかの形でプレイヤーを各陣営に分ける必要がある。その部分は、男子カードと女子カードの組み合わせで決めるのがややユニークになりそうだと感じた。1枚のカードで陣営が規定されるより、半分ロジカルで半分ファジィな状況を作れると思ったからだ。 と、つらつらと考え大枠は1日で固まった。正月休暇中だったので、わりと集中して時間をつくれたのが良かった。それなりに遊べる形になっただろう、ということで知り合いを呼んで何度か試遊してみた。そこそこ、面白かった。だが、そこそこだった。何かが足りない、ともう一度ルールを見直すことにした。 ゲームを面白くするためには何が必要か改めて自問してみる。それはきっと、ゲームのルールを壊すルールの存在だと考えた。大富豪だって、革命や8切り、イレブンバックなど通常のルールと逆行するルールの存在がゲームを面白くする。基本的なルールが固まったら、それをいかに壊すかを考えると面白くなるはずだ。 そこで考えたのが「二股」だった。『THE 修学旅行の夜』は、男子カードと女子カードを1枚ずつ配り、その組み合わせによって陣営が決まる。だが、二股できる「プリンス」というイケメンの場合、女子カードを例外的に2枚受け取ることができるとしたのだ。二股をかけている「プリンス」は、相手を欺くことができる。好きな子のヒントを公開するときに、どちらのヒントを公開しても良いからだ。嘘は言ってない。誠意がないだけだ。他のプレイヤーより女子カードを1枚多く持つことになるが、それはどこかに隠せば良いということにした。二股は多少バレるリスクがある方が面白いだろう。 と、このルールを追加して組み合わせのパタンを精査し直したことで、だいぶゲームとして面白みのあるものになった気がしている。何より単純に、枕投げをしながらお前の好きな子誰だよとワイワイするのは、それだけでなかなか楽しい体験だった。どういった体験をさせたいか、というコアな部分は初期からブレなかったので、ルールの追加も比較的スムーズだった。 以上、所々省きながらも『THE 修学旅行の夜』の作り方。 『THE 修学旅行の夜』 紹介ページ 『THE 修学旅行の夜』&『THE 残業』 予約受付ページ Amazonからのご購入はこちらから。 Amazon|THE 修学旅行の夜|カードゲーム
- 2017/5/4 23:46
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- 『THE 修学旅行の夜』非電源ゲームの魂は非電源作業に宿る
- こんにちは。カラメルカラムの非電源脳の方、シラカワです。前回の記事に引き続き『THE 修学旅行の夜』の制作話を書きたいと思います。さて、皆さんが愛好するゲームの数々、いわゆるアナログゲームとかボードゲームとかテーブルゲームとか呼ばれるやつですが、私は「非電源ゲーム」という呼び方が結構好きです。こういうの「レトロニム」っていうのご存知でしたか? 「レトロニム」、「再命名」とも言うのですが、言葉の意味が時代の変化によって拡張された場合に、敢えて古いものを特定的に示すために行われる命名のことです。例えば、「ギター」といえばそもそも電気を必要としない楽器であるのに、エレキギターが登場したことによって、「アコースティック・ギター」というレトロニムが生まれるわけです。 非電源ゲームとかアナログゲームってのもそうですよね。ゲームというのは人類史に寄り添ってきたものですので非電源が当たり前だったのに、デジタルゲームが誕生したことによって古い意味の方に再命名がされたということです。何が言いたいかって? いや、これは単に明日から合コンで使える小粋な豆知識です(ウケる豆知識とは言ってない)。 ということで、今回は『THE 修学旅行の夜』が完成するまでの「非電源」な作業についてご紹介しようと思います。簡単に言うと、紙資源を浪費して作りまくった試作品の供養です。PCの前に座ってるだけでは非電源ゲームは作れない! レッツ! ワクワクさん! ところで、これ読んでいる非電源ゲーム制作者の方の中に試作品を作らずに入稿するっていう人がどれくらいいるのかはわかりませんが、せっかくなので、私の試作品づくりの過程でもまとめてみます。箱の場合はこんな感じです。 まずはPC上で作ったデザインデータをどこにでもある普通のA4紙にプリントアウトします。言っときますけどデザインはPC上でやりますよ。私も一応現代人ですからね。一応。印刷会社さんからもらったテンプレートを使ってるので、タチキリ枠がついててわかりやすいです。印刷すればそのまま「原寸大」です。 さぁ童心に返ろう! ということでカッターマットとカッターの登場です。断ち切り枠に添って綺麗に切っていきます。楽しいですね。ワクワクするワクワクさん作業です。居もしないゴロリに話しかけながらやるとよりヤバい感じになりますよ。 これで形は完成です。展開図ってやつです。算数の授業を思い出しますね。組み立てるときにテープを貼る部分を残しておくのが重要です。展開図がそのまま3Dになるのはデジタルの世界だけです。 さて、これをこのまま折って組み立てることもできるのですが、美しい試作品をつくるためのコツがひとつ。折り曲げる辺を「半切り」します。「紙の厚みの半分だけ」を切るのです。紙というのはつまり繊維でして、繊維の半分だけを殺すわけですね。力加減を誤ると全部切れてしまいますので、これは熟練のテクニックを必要とします(実際はべつに大したテクニックではない)。「安心しろ……みねうちだ……」とかつぶやきながらやると楽しいです。 どうでしょう。「半切り」をすることで、力を入れずともパキっと曲がります。ビューティホー。折り曲げる辺はすべて「半切り」を施しましょう。折ったときに「山」になる側を「半切り」するのが重要です。逆だとびっくりするくらい曲げにくくなります。 さぁパキッとパキッと曲げて、あとは糊代部分をテープでとめれば完成です。箱の下の方もこの調子で作っちゃいましょう。 できました。これが原寸大の試作品となります。ここからが敢えて非電源作業で試作品を作る最大の目的。いろんなボードゲームにさりげなく混ぜて並べてみます。ゲームマーケットが終わると、Twitter等で「本日の戦利品」写真をアップしてくれる人がたくさんいますよね。その時『THE 修学旅行の夜』は目立つのかな? 埋もれないかな? というのをチェックするわけです。デジタルゲームと違って、非電源ゲームはインテリアの一つにもなりえます。部屋の棚に並べたときに一番前に置いてもらえるかな? 奥の方に仕舞われないかな? そんなことも考えます。こういうことを考えている時の私はわりと乙女な顔をしている気がします。 「む! 中々目立つな!」「ニムト! やっぱりいいデザインだな!」「キャラがドーンとあるとインパクトあるな!」 とかね。PCの画面上で見ているだけではわからなかったところがどんどんと見えてきます。上から横から裏から眺めてみて、手にとってみて、開けたり閉めたりしてみて、頬ずりしてみて、ベストな完成品を想像します。 いかがでしたでしょうか。もちろんカードもチップもルールブックも試作品をいくつも作りました。こんな作業をひたすらやっておりました。ひたすらやっておりましたら、オフィスがゴミの山……もとい、試作品の山になりました。そういえば『THE 残業』の試作品もまだ捨ててなかった……。なんというか……すごく……邪魔です。メルカリに出品したら高値つかねーかな(時事ネタ)。 では最後に、ゴミ・マウンテンの写真をどうぞ。 ゲームマーケット2017春、カラメルカラムのスペースは【K03-04】! 新作『THE 修学旅行の夜』は200個、前作『THE 残業』は100個販売予定です。 確実に手に入れたい! という方は取り置き予約を開始していますので、ぜひご利用ください。取り置き予約がたくさん入っていると私たちも当日心穏やかに過ごせます。よろしくおねがいします! 【取り置き予約ページ】 さて……次の燃やすゴミは何曜日だったかな。 Amazonからのご購入はこちらから。 Amazon|THE 修学旅行の夜|カードゲーム
- 2017/4/28 21:23
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- 『THE 修学旅行の夜』で身をもって知った男子校育ちのカルマ
- こんにちは。カラメルカラムのボードゲームでイラストを担当しているシラカワリュウです。昨年末のゲームマーケット2016秋から早4ヶ月。もう新作ですよ……えぇ。今回もゲームデザインの部分は大野氏のブログにまかせるとして、私はイラスト・キャラクター部分について書いてみたいと思います。 前作『THE 残業』では、私が元々落書きで描いていたオリジナルキャラクター「デス・クワーカー」君を主人公として起用したため、「キャラクターをデザインする」という点においては楽だったんですが(まぁそれでもこんな感じでしたけど)、今回は一からキャラクターをデザインする必要がありました。 しかも。しかもですよ。 大野氏(ドS)は私がもっとも苦手とする「女の子」キャラを要求してきたのです。いや、ドSの言い分はわかります。ゲームのテーマが修学旅行ですから、女の子は必要でしょうよ。頭のとんがった得体のしれない生物では成り立たないでしょうよそりゃ。……まぁそんなわけで、私は仕方なく女の子キャラの沼に一歩一歩足を踏み入れていったのです。 まずは、どんなテイストのイラストで行くのかを探るために、同じ服装・髪型の女の子を色んなテイストで描いてみました。もう一回言っておきますけど、私女の子描けないんす。なので、この画像出すの中学生時代の黒歴史ノート掘り返すくらい恥ずかしいんす。そこを汲んでください。 ご覧くださいこの迷走っぷり。まー可愛くない! 可愛くないよ!! ◯とか×とか△とかつけてるけどこんなもんぜんぶ×じゃ! 色んな作家さんの絵を参考にしながら頑張って描いたんですけど、これ見せたら大野氏ひとこと「んー全部かわいくない」ですって。わかっとんじゃい!! さぁ困ったシラカワ。早くも暗礁に乗り上げた。私はうなりました。いわゆる日本的な「カワイイ」な女の子はワシには無理や……なにか……なにか裏技を…逃げ道を……。そんな時大野氏が一言。「パ◯ーパフガールズとかそういう系でもいいっすよ」。なるほど。アメリカンカートゥーン系ですね。カートゥーンネットワーク系ですね。それならばなんかイメージつきますね。私は主に池袋のルノワールに居座ってひたすらクロッキー帳にラフを描き続けました。そして……!! み、見えた! これや! しかもこの男子カードと女子カードがハイタッチしてるデザイン、いいやんけ!洒落とるやんけ! こうなってしまったら意外に早いのが私シラカワリュウ33歳独身。まずはこの造形をテンプレート化しました。素体化ってやつですね。 こんな感じで、頭身を固定。この素体に則って各キャラクターをデザインしていくわけです。素体を並べてプリントアウトし、シャーペンで描き込んでいきゃいいんです。ハッハ!楽勝!……とシャーペンをカチカチした時、私の脳裏にある疑問が。 女子って寝る時どんな服着てんだ……? そうなのです。このゲーム、タイトルからもお察しの通り「修学旅行の夜」をテーマにしているため、出て来るキャラは男子も女子も、修学旅行の夜の格好、すなわち「寝間着」を着ている必要があるのです。 さて、ここでブログのタイトルにご注目ください。残念ながら私は中学高校と6年間男子校とかいう現代の奴隷制度、いや奴隷制度などナマヌルイ。牢獄だ。精神の牢獄に閉じ込められていたのです。修学旅行の夜に女子の部屋に忍び込んでUNOに興じていたら竹刀を持った教師に見つかってアタフタ! でもそんな事件を通して心が通じ合った女子と奈良公園の鹿の粋なはからいで急接近!! みたいなクソラブコメ漫画のような体験は皆無だ!! あーくそ。男子校の修学旅行の夜なんてのぁ「バ、バスガイドさん可愛かったね……」とかボソボソ言いながらコンビニで買ってきたジュースをミックスして得体の知れない液体を作るとかそういうのなんだ。寝間着を! 我に女子中高生の寝間着を!! ……と、Twitterで犯罪まがいなことを吠えておりましたら知り合いの作家さんが「こういう資料があるよ」と色々参考になるサイトを教えてくれて事なきを得ました。持つべきものは人脈だなって思いました。 そんなわけで、ゲームに登場する8人の女子たちを、服装・髪型・体型などで差別化しながら描いていきます。差別化はゲームのルール的にも重要なポイントなのです。 続いて色。これも各キャラのイメージカラーがなんとなく出るように配色しました。 そして清書!今回も『THE 残業』と同じくCLIP STUDIOを使用して描いていますが、素体のおかげでだいぶシステマティックに作業ができました。4ヶ月で素晴らしい成長っぷりじゃないか君ィ。 こうして『THE 修学旅行の夜』のキャラクター達は描かれていきました。ゲームマーケットでお買上げの際は、「あぁ…これ描いたやつ……実体験ないんだな……」と憐れみつつカードを眺めていただけると幸いでございます。素肌にジャージ(の上だけ)という男子悩殺の女の子もいるよ! 『THE 修学旅行の夜』はゲームマーケット2017春、【K03-04】にて初売りです。ただいま取り置き予約を受け付けておりますので、確実にゲットしたい方はぜひご利用ください。 事前取り置き予約ページ 女子キャラのひとり、有村なるみさん。Tシャツの柄で『THE 残業』をステマするという偉い子である。 Amazonからのご購入はこちらから。 Amazon|THE 修学旅行の夜|カードゲーム
- 2017/4/21 20:17
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- 『THE 修学旅行の夜』&『THE 残業』取り置き予約受付中
- 枕投げで好きな子を探り合う、推理系パーティーゲーム! 株式会社カラメルカラムの『THE 修学旅行の夜』は現在予約受付中です! また、すべての「働く人」を応援するトリックテイキングゲーム 『THE 残業』の再販分も予約受付中! 予約はこちらまで! ブース番号は【K03-04】で、試遊スペース付きブースとなります。 是非お気軽にお立ち寄りくださいませ。 予約に関してご不明な点がございましたら、カラメルカラムのTwitterアカウント (@Caramel_Column)までご連絡いただけますと幸いです。 THE 修学旅行の夜_ゲーム紹介 THE 残業_ゲーム紹介 Amazonからのご購入はこちらから。 Amazon|THE 残業|カードゲーム Amazon|THE 修学旅行の夜|カードゲーム
- 2017/4/14 20:37
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- 『THE 残業』委託販売開始のお知らせ!(と無駄な文章)
- それはゲームマーケット2016秋の翌日であった。 お茶をすすりながら「年明けから委託販売の準備しようかねぇ〜ズゾゾゾゾ」とまったり考えていたら、Twitterで『THE 残業』が画像つきでバズってしまい、そのRT回数実に13,000回超え(リツイート、ふぁぼくれた皆様ありがとうございました)。このバズりっぷりに動揺したのは他でもない我らであった。お茶を口の脇からダバダバこぼしながら、「これはあかん……はよう委託販売の準備をせんとあかんで……」と確信したカラメルカラム。「なる早で」をスローガンに準備を進めておりました。その間もTwitterで「どこで手に入るんだ」「さっさと委託しろ」「カキフライ食べたい」等々、たくさんのご意見をいただきまして、ガタガタ震えながらイエローサブマリン様に……あぁもう普通に書いていいっすか。 ということで!お待たせしました! 12月17日(土)より、イエローサブマリン秋葉原RPGショップ様におきまして、『THE 残業』の委託販売を開始いたします。とりあえず40個のみ委託しております。 ↓あらためてゲーム情報です 『THE 残業』 ジャンル:トリックテイキング プレイ人数:3〜5人 プレイ時間:15分〜30分 対象年齢:10歳〜 ゲームデザイン:大野真樹 イラスト:シラカワリュウ 制作:株式会社カラメルカラム ↓取り扱っていただく店舗様です。 イエローサブマリン秋葉原RPGショップ HP 通信販売につきましては、準備にもう少々時間がかかります。 通販開始しましたらTwitterにてお知らせしますので、 よろしければフォローをお願いいたします! 年末年始はみんなでTHE 残業! Amazonからのご購入はこちらから。 Amazon|THE 残業|カードゲーム
- 2016/12/16 21:58
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- 『THE 残業』のルールができるまで
- そうだ、トリックテイキングを作ろう。 乗りと勢いだけでゲムマに出展すると決めた大野は、トリックテイキングなゲームを作ることにした。理由は「高校時代にトランプのナポレオンばかり遊んでたな」「『八十日間世界一周』に出てきたホイストおもしろそうだったな」「大学時代に近くの喫茶店でコントラクトブリッジの話してた謎のおじさん・おばさん多かったな」という漠然としたトリテへの親近感がひとつ。 そしてもうひとつ、ゲムマ初参加でまったくもって無名な弊社のゲームを手に取ってもらうためには、ピンポイントながらもメカニクスとして人気が根強いトリテが選択肢として有力だろう、と打算的な思いがあったからだ。 とはいえ、トリテはなかなか説明が難しいと感じることが多い。ルールの説明はもとより、ルールを理解してもらった上でもゲームのおもしろさを説明するのが難しいという印象だ。「マストフォロー」はまだしも「ビッド」や「切り札の有無」など、繰り返し遊んで肌感覚として理解しないと伝わりづらいおもしろさが、トリテにはあるような気がした。「やり込めばおもしろいんだけど、そこに至るまでのハードルが高い」のがトリテの特徴のひとつだろう。 『THE 残業』の元ネタは、『5本のきゅうり』に代表される「きゅうり」「キューカンバ」と呼ばれるゲームだ。数あるトリテの中でも「モノスート」「ラストトリックで1勝負が決まる」ことが特徴の系譜だ。『THE 残業』ではシンプルでわかりやすいきゅうり系のルールをメインにしつつも、『ハーツ』や『スカルキング』の各要素も取り入れることにした。 【きゅうり系(モノスート+ラストトリック取っちゃダメ)+ハーツ(手札の交換要素+シュート・ザ・ムーン的逆張り要素+ブレイク要素) +スカルキング(モチーフにマッチした掛け声要素)】 まず、手札の交換要素について補足する。トリックテイキングのおもしろさを分解すると、ビッドに代表されるトリック前の戦略要素と、手札のプレイ順といったトリック時の戦術要素、そのふたつの掛け合わせが楽しいのだと気づく。とはいえ、ビッドはトリテ初心者に伝わりづらい問題がある。手札の交換だったら『大富豪』などでも馴染みがあり、習熟までそれほどプレイ回数かからないだろう、ということでトリック前の戦略要素として追加することにした。 手札交換の要素を追加したものの、まだこれでは効果が薄いと感じた。手札の交換には、プレイヤーの戦略が反映されなければならない。モノスートだと、スートという概念がないので手札の交換の指針に幅がなくなってしまったのだ。で、考えてみた。『ハーツ』はなぜ交換がアクセントになるかというと、スートを固めるという以外でもシュート・ザ・ムーンがあるからだ。勝利までの道筋が2パタン以上あれば、手札の交換がスートなしでも生きてくるのでは……? ラストトリックを獲得したら敗北というきゅうり系の勝敗条件とは別に、それ以外のトリックを過半数獲得したら勝利という別軸の勝利方法を設定することにした。詳しいルールはこちらに記載しているが、『THE 残業』ではラストトリック前に獲得したトリック数に応じて《勝ち抜け》できる「高ストレス者判定」ルールを導入している。 「高ストレス者判定」にはもうひとつ狙いがあった。テストプレイ時に出た意見として、「ラストトリック以外でゲームが動いてる感じがしないのは、あんまりドキドキしない」というのがあった。もちろん「いや、その静かなる戦いがおもしろいのだ!」という反論もあると思うが、少々玄人好みなルールなのは間違いない。その意見を受け、なおかつゲームのモチーフを活かしつつ、ラストトリック以前のトリック獲得でストレストークンを獲得し、ストレスが一定以上溜まったらカウンセラとの面談でライフが回復するという「高ストレス者判定」ルールが生まれた。 このルールを採用したものの、またバランス調整の必要に迫られた。「高ストレス者判定」はラストトリック以前の4トリックのうち、3トリックを獲得したものとしていた。効果は失ったライフの回復。となると、敗北したプレイヤーにこそ意味のある効果だが、敗北したプレイヤーは次ディールのスタートプレイヤーとなるので(後述する終電ブレイク要素も相まって)1回目のトリックを獲得しづらい。つまり、実質2回目〜4回目のトリックの内、3トリックを獲得しなければならないのだ。そのため、やや大味になることを承知で、敗北プレイヤーはストレストークン1個を最初に受け取り、4トリック中2トリック獲得したら「高ストレス者判定」というバランスにした。ライフ回復する機会が増えたことで逆転性も高まったので、パーティゲーム的な調整としてはベターだったと考えている。 『ハーツ』から取り入れた要素はもうひとつ、ブレイク要素がある。『ハーツ』のハートブレイク同様、『THE 残業』では"誰かが「終電オワタカード」を場に出す(以降、「終電ブレイク」と呼ぶ)まで、「終電オワタカード」を場に出すことはできません"というルールを採用している。1ディールのカード枚数を少なくした本作において、序盤の「終電オワタカード」が理不尽に機能しすぎてしまうことが懸念されたからだ。「終電ブレイク」のタイミングは相手プレイヤーにも依存するので、思うように終電オワタカードを出せない瞬間もあり、手札交換時に考慮すべき点にもなった。なにより、誰かが終電を逃さない限りその週は終電過ぎまで働けない(裏を返せば、誰かが終電を逃したらその週はみんななんとなく終電を逃してしまう)、というのもテーマに合致している。 そして、『スカルキング』から取り入れたのが「モチーフにマッチした掛け声要素」だ。トリテは比較的無言でプレイしてしまいがちな気がしていた。これはテストプレイ時にも感じたことだ。みんな必死に、手札とにらめっこして考え込んでしまう。だが、『UNO』しかり『麻雀』しかり、ゲームルール内に発声要素があると口の滑りが良くなってパーティゲームらしさが出るのでは? と仮説を立て、『THE 残業』では先にカードをプレイした人が「お先に失礼します!」と声を掛け、次以降にカードをプレイした人は「お疲れ様です……」と返すという、ロールプレイング感を高める掛け声を採用している。 掛け声同様、モチーフ感を強調するための工夫としてカードの数字がある。カード内に記載された数字は退勤時間を示しており、すべて独立した数字としている。数字の種類は31枚、これはひと月と同じ日数だけあるということだ(土日祝日はどこだ、など考えてはいけない)。1ディールで使う枚数は1人5枚なので、4人プレイ時では31枚中20枚しか使わない。記載された数字がある程度以上にファジィな値だということも相まって相手の手札が読みにくい、ともすればギャンブル性が高く勝ち負けの予想が難しいゲームとなっている。が、カウンティング必須のゲームにするくらいならギャンブル性を高めて、厳密さよりもパーティゲーム性を高めたいという理由で今の形となった。また個人的に、同じ数字だけど先に出した(あるいは、あとに出した)人の勝ち、というのがあまり好きでなく、いっそすべての数字をユニークとしてしまえという好みに寄るところも大きい。 そのほか、好みの問題で採用しているルールも多い。まず、カード枚数は少なくしたかった。1ディールが終わるのに10トリックかかるのは少しテンポが悪いと感じることもあり、使用カード枚数は1人5枚とした。初期手札が5枚だと出せるカードの幅はどうしても少なくなってしまいがちだが、トリックテイキングは小規模なディールを重ねて遊んだ方が初心者でも馴染みやすいかと思ったのも理由だ。 また、失点の計算はライフポイント制としトークンで管理することにした。これも個人的な好みで、コンポーネント外の紙とペンで点数表をつけるのが苦手だったからだ。ラストトリックで出したカードが「終電オワタカード」の場合は2点失点、それ以外は1点失点としたことで、「終電オワタカード」を不用意に溜め込むことへのリスクもつけることができた。カードゲームで「ライフ」「ストレス」と2つのリソース(トークン)を用意するのは、ややデジタルゲームの文法に近くアナログゲーム的な美しさに欠けるかもと思ったが、そこはある程度目をつむることにした。 とういわけで、長々と『THE 残業』のルールができるまでについて書いた。ちなみに、これはブログ用に書き起こしたものというよりも、ルールブックを書くまえに自分用メモとして書いたものをベースとしている。「はてさて、自分はいったいどうしてこのルールを採用したんだっけ……」ということを、あらためて言語化して整理したかったからだ。ともかく、トリックテイキングが好き、きゅうり系が好き、なんとなくアートが気になる、理由はなんでも大歓迎なので、気になったら12/11(日)に【J04】にお越しいただけますと幸いです。 『THE 残業』に関する内容は、ゲーム詳細も併せてご確認いただければ。 Amazonからのご購入はこちらから。 Amazon|THE 残業|カードゲーム
- 2016/12/9 22:00
- カラメルカラム
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- 箱デザイン難航の記録
- 今回もアートワーク担当のシラカワが書きます。前回ブログでは、カードのイラストを完成させるまでを書きましたので、次はデザインについて。今回カラメルカラムが販売する『THE 残業』には「退勤カード」以外にも、トークンやルールブックが入っています。トークンとルールブックも手間がかかったといえばかかったのですが、何よりそれらを包む「箱」。こいつのデザインが難航しました。箱、すなわちパッケージ。パッケージといえば商品の顔です。ブースにザザーっと並べた時、通りかかったお客さんが「いいね!!(親指を立てながら)」となってくれないといけないわけです。箱デザインの責任は重大なのです。なのです。 ということで順を追ってご紹介しましょう。ちなみに写真は原寸大の試作品です。プリントアウトしてワクワクさんばりに工作しました。 第1案:通称「ザ・シンプル」 これが特に凝ったことをせずに作った第一案です。カードイラストをそのまま転用して、シンプルな色合いにしました。とはいえ……さすがにシンプルすぎる。インパクトがなさすぎる。隣のブースのゲームに完敗してしまう。ボツりました。 第2案:通称「終電4色」 やっぱりカラフルじゃないとダメだね! と思った私は、退勤カードが4色に分かれているという仕様を元に、4つの表情のデス・クワーカー君を描き下ろしまして、バランスよく組み上げました。ゲームのキーワードにもなっている「終電」もわざわざ描いて。しかしゲームタイトルが小さくなってしまい、デザインの方が強く出てきてしまうので泣く泣くボツにしました。タイトルはドーンと出ていてほしいですからね。 第3案:通称「横型4色」 第2案の反省を踏まえ、横型デザインにしてみることに。デザインの組み方は第2案を踏襲し、真ん中に大きくタイトルが来るようにしました。お! これいいじゃん! これで決まりじゃね?と思ったのですが、大野氏からツッコミが。「なんで菱形?」……そう、真ん中の空間が菱形である必然性があまり(というか全然)なかったのです。いったん気になりだすと「なんで菱形なんだオマエ!!」という感じになってしまい、これまたボツに。なんで菱形なんだよ! 第4案:通称「デス君ドーン」 バランス重視の4色デザインを諦め、キャラ押しでインパクトを出してみるか、とラフまで描いたのがこちら。絵面的には私けっこう気に入ってたんですが、大野氏による「ザ・シンプルが一番良い気がしてきた」という発言により、これもボツ。嗚呼……。 第5案:通称「ザ・二択」 ということで、「ザ・シンプル」に立ち返り、色味を押さえたバージョンと、あくまで4色を取り入れたカラフル版を作成。もちろん「ザ・シンプル」よりも全体のバランスを気にかけて微調整に次ぐ微調整を繰り返しています。で、できあがった試作品がこの二つ。最終的にお客さんが買ってくれるか否かっていうのが問題なので、最後は皆様の声を聞いてみることにしました。 Twitterアンケート!! もう投票受付け終わってますけど(そりゃそうだ)、これが投票ツイート。 ぶっちゃけ……ぶっちゃけ私、4色カラフルのデザイン②が圧勝だと思ってたんですよ。ただ投票序盤は、かなり競ってまして、意外でした。リプライも色々いただいたんですが、「デザイン①の方が残業の寂しさがある」というご意見が多かったですね。なるほどそういう見方もあるか、と感心しました。結果600票以上も投票いただきまして、ありがたい限りです。 あぁ今回も長くなってしまいました。そんなこんなで出来上がったパッケージデザイン。他にもポスターやらポップやらサークルシートやら、ボードゲーム作ってイベントに出展するだけでこんなにデザイン必要かね!? というくらい入稿しまくりました。ぜひ当日は【東7・J04】ブースにお越しいただき、ご覧いただければ幸いです。お待ちしてます! 取り置き予約も受付中ですので、確実にGETしたい人は是非ぜひ予約してくれると泣いて喜びます! 捨てるに捨てられない試作品の山。 Amazonからのご購入はこちらから。 Amazon|THE 残業|カードゲーム
- 2016/12/2 22:00
- カラメルカラム
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- 【J04】『THE 残業』取り置き予約受付中【トリックテイキング】
- すべての「働く人」を応援するトリックテイキングゲーム 株式会社カラメルカラムの『THE 残業』は現在予約受付中です! 予約はこちらまで! ※ なお、予約完了後のメール返信はしておりませんのでご了承ください。 予約に関してご不明な点がございましたら、カラメルカラムのTwitterアカウント (@Caramel_Column)までご連絡いただけますと幸いです。 ブース番号は【J04】で、試遊スペース付きブースとなります。 是非お気軽にお立ち寄りくださいませ。 内容はゲーム詳細をご確認くださいませ。 Amazonからのご購入はこちらから。 Amazon|THE 残業|カードゲーム
- 2016/11/26 0:34
- カラメルカラム
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- 『THE 残業』は31枚の残業絵巻である!
- 『THE 残業』はゲームデザイン担当の大野と、アートワーク担当の私シラカワの2人で作ったわけですが、制作を初めてからしばらくはずっと大野のターンッ!私は大野が作ってきたルールを聞いて「ふーん」とか「ほーん」とか言いつつ、たまに「ここわかりづらい」などとコメントしてただけだったのです。しかしルールが固まってからシラカワのターンッ!(鈍い音)。いよいよキャラクターデザインと、イラスト制作が始まってしまいました。 このトリックテイキングゲームには31種の「退勤カード」を使います。それぞれに固有の時間が記されていて、時間がカードの強弱を示すという作り。 ゆえに。31種類のイラストを描かなければならないわけで。えぇ……。 さて、私は「渡りに船だ!」とでも言うように、以前より描いておりました自分のオリジナルキャラクター「デス・クワーカー」君をこのゲームの主人公にすることに決めました。ぶっちゃけると最初は4キャラクター出すつもりでしたが、今になって思うとやめておいて正解です。 ボツった4キャラ体制。特に一番左のやつヤバイ。こんなやつ描いてたら終わらなかった。 登場キャラクターをデス・クワーカーのみに絞ったところで、31種類のイラストラフ案を出すわけですが、これが最初の難関。最初の5パターンくらいは簡単に出たんですが、そこから先は「残業中ってどんな感じだっけ……」という自問自答を繰り返し、サラリーマン時代の甘酸っぱい思い出を頭から引っ張り出していくのです。開けてはいけない扉を開けている気分でした。 ラフはクロッキー帳に手描き。汚くて自分でよくわからなくなる悪い例。 まぁそんなこんなでなんとか31パターンのイラスト案をでっち上げ…否、吟味しまして、いざ本制作となりました。そもそも私、絵描きが本業ではござらんので、ちゃんとしたデジタル制作はこれが生まれて初めて。つきましては巷でも評価の高い「CLIP STUDIO」を導入した次第でござる。ペンタブの操作はなんとか慣れていたのですが、ほぼすべて手探りです。第二の難関です。 こんな感じで。時間ごとのデス・クワーカー君の様子を描きました。 という具合に、来る日も来る日も絵を書き続け、時に差分でごまかし…もとい、合理化を図りながらなんとか31種類のイラストが完成したのです。さぁこれであとはデザイン作業に入るぞーっとなった時、第三の難関が私に襲いかかりました。それは……。 「俺、上手くなるスピード速すぎ問題」 はい。初心者にありがちなやつです。31枚のイラストを描いていく過程で、ペンさばきの上達、クリップスタジオの便利機能発見、レイヤー分けの最適化習得、そしてそもそものキャラクター造形の改善、等が原因です。最初に描いたデス・クワーカー君と、最後に描いたデス・クワーカー君がまるでクオリティちがうやんけ、という問題が発生したわけですね。まぁこれ解決方法は一つだけなので、泣く泣く描き直しました。残業して。 ※「上手くなった」はあくまで個人的な感想です。 ハッ!長くなりすぎました。今回はイラストの話だけになってしまいましたが、今度デザイン編も書きたいと思います。それでは12月11日、【東7ホール・J04】ブースでお待ちしております。 Amazonからのご購入はこちらから。 Amazon|THE 残業|カードゲーム
- 2016/11/11 22:44
- カラメルカラム
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- ゲームマーケット初参戦はトリックテイキングゲーム!
- 説明しよう! 日夜残業と戦うデス・クワーカーは 余計なことを言わないよう口をマフラーでふさがれているのだ! すべての「働く人」を応援するトリックテイキングゲーム! と、パッケージ裏に書きました。 初めてのゲームマーケット参戦となります、株式会社カラメルカラムの大野です。ゲームシナリオ制作や企画・マーケティングなど、普段はデジタルゲームのお仕事が多いんですが、アナログゲームも好きなので自分たちでも作ってみました。 内容はトリックテイキングゲームです。高校生時代の記憶がかなり曖昧な私ですが、トランプでひたすらナポレオンをやっていたのでトリックテイキングに馴染み深かった、というのが理由のひとつです。あと、ヴェルヌの小説『八十日間世界一周』で主人公のフォッグ氏が道中ホイストに興じてるのが、これはこれは、なかなかオシャレじゃないか、って感心したのも理由のひとつです。 というわけで、せっかくブログの機能があるので目一杯つかってやるぞ! という意思表明だけして、細かいルールやアートワークは後日まとめます。たぶん。あ、書き忘れてましたが、タイトルは『THE 残業』です。そう、この文章もまた、残業という尊い犠牲の上で書かれたものなのです……(怖い話風なオチ)。 Amazonからのご購入はこちらから。 Amazon|THE 残業|カードゲーム
- 2016/11/4 23:15
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